俺の飼っている実装石「ボルチモア」の様子が変だ。 部屋の隅に顔を埋めて、デスァ!! デスァ!!と至極真剣なご様子。
「おい。ボルチモア」
「デスァ!! デスァ!!」
聞いちゃいない。俺の声にも反応せず、くぐもった声で奇声を繰り返している。 ボルチモアは次いで、いきなり服を脱ぎ始める。 丁度、弁当を食っていた俺はポロリと箸から揚げちくわを落す。
ボルチモアは律儀にも揚げちくわを拾い、俺の箸に揚げちくわをセットしなおす。 そして再び、次は全裸で、部屋の隅に顔を埋めて、デスァ!! デスァ!!と叫び続けている。
「………いかん。病気だ……」
そう思った俺は実装病院に電話を入れ、ボルチモアを移動用のゲージに詰め込み、 急ぎ病院へと向った。
「これは思春期ですな。行き場を失ったリビドーのはけ口に、あのような行動を取ったのでしょう」
医師はそう言った。
「デスァ!! デスァ!!」
診療室の部屋の片隅で、相変わらず、全裸で顔を埋めて、くぐもった声で鳴くボルチモア。
「抗衝動剤を出しておきます。恵方の方角を向いて、巻き寿司と一緒に食べさせて下さい」
俺は帰りに関西スーパーで巻き寿司を買って帰路につく。 帰りしな、俺はゲージ内のボルチモアに向かって言った。
「おまえ、巻き寿司って初めてだよな」
「デスァ!! デスァ!!」
俺は巻き寿司を両手で頬張って食べるボルチモアの姿を想像しては、 少し頬を赤らめながら、家路を急いだ。
(完)