「デスァ!! デスァ!!」
「いや。だからもういいって。謝っているのはわかってるから」
俺の飼い実装の「ボルチモア」が、俺に向かって土下座を繰り返している。 繰り返して下げる頭の額が、何度もフローリングに床にぶち当たり、血が薄っすらと滲み始めている。
「デスァ!! デスァ!!」
謝る涙目のボルチモアの後方には、割れた花瓶がフローリングに広がっている。 ボルチモアは、必死に自分の過失を、己の行動で俺に示そうとしているのだ。
「わかったよ。さ、触ると危ないから片付けよう。ボルチモ…」
「デスァ!! デスァ!!」
ボルチモアはまだ自分が許せないのか、スリッパの裏を舐めながら、チラリチラリと俺を見る。
「もういいよ。ボルチモア」
飼い実装としての過失に耐えられないのだろう。 ボルチモアはその日は、台所の床。トイレの金隠しの隅。風呂のタイルの間を隈なく舐め続け、 俺の様子をしきりに覗うのだった。
3日後。 近所の100円ショップで買った花瓶は、すんなり部屋の風景に同化した。 ボルチモアは、今は、リビングで絵本を読みながら、鼻唄などを鳴らしている。 まったく、現金な奴だ。
(完)