『飼い実装メイ』2
気を失ったメイは、女奴隷の手によって暗い箱の中から助け出された。
ダンボールが積まれている家の中、メイは風呂に入れて貰い、甘い玉を貰った。
服も新しい物に着替え、水をたくさん飲んだ。そして、ひたすら眠った。
女奴隷は、夜遅くまでダンボールと格闘を続けていた。
眠りから覚めた時は、メイは見知らぬ殺風景な部屋にいた。
メイは元のメイの部屋に戻っているのを期待したのに、全然見知らぬ部屋にいる。
ケージは、見覚えがある。前の部屋にあったケージだ。
メイはケージの檻を両手で掴み、見入るように部屋を見渡した。
「違う。私の部屋じゃないデス…」
メイは部屋の端から端まで見渡して、?な顔で考え込んでいる。
「何処デス?私はどこにいるのデス?」
考えるにつれて、次第に怒りが湧いてきた。
「ニンゲンは何処デス?ニンゲンッ!私はここデス!私を早く部屋に戻すデス!」
メイがひたすら騒ぐと、部屋の扉が開いた。
メイはすっかり女奴隷が現れると思っていたが、そこに見たことのない男奴隷が現れたのだ。
メイの記憶が遡る。
前の部屋にいた時に、見たことのない奴隷が現れ、自分は暗闇の空間に閉じ込められた。
目に前に現れたのは、同じく見たことのない奴隷。その恐怖の記憶がメイに蘇った。
騒ぐのをやめたメイは、途端に歯をカチカチカチカチと鳴らしながら、何時の間にか
涙ぐんだオッドアイで、見たことのない奴隷を見上げていた。
 ぶり・・ぶりぶり・・じょぉぉぉ・・・
排便と失禁。そして悲鳴。
「デジャァァァッァァァッァーーーーーーーーーーーーッッ!!」
メイは力の限り叫んだ。糞を掴んでは投げた。
来るな!糞奴隷!死ね!死ね!死んでいなくなれ!
メイは震えながら、パンツの中から糞を掴んでは投げる。投げる糞がなくなると
ケージの隅に蹲って、頭を抱えて丸くなり、ひたすら震え上がるだけであった。
男奴隷が何か鳴き声をあげると、見知った女奴隷が現れた。
メイは女奴隷の鳴き声を聞くに、顔をあげ、今までの鬱憤をぶちまける。
「デエェェッ!! おまえは今までどこにいたデスか!この糞ニンゲン!」
「使えない奴隷! 死ね!死んでしまえデス! 私に捨てられたくなかったら
 この奴隷を追い払うデス!そして、私を元の部屋に返すデスッ!!!」
両手糞まみれの手でケージの檻から手を伸ばすメイ。
女奴隷は、一旦部屋を出て濡れたタオルと替えのパンツを持ってくる。
デスンデスンと泣きじゃくるメイをあやすように、メイの体を綺麗にする女奴隷。
メイは女奴隷が、今まで通りに自分の世話をすることに安心を覚えた。
不安なのは、この見知らぬ男奴隷。そして、この殺風景な部屋だ。
「デス!どういうことデスか! この男奴隷は誰デスか!」
「この部屋は何処デスか! 早く元の部屋に戻すデスッ!」
女奴隷は、メイのパンツを綺麗に替えた後、男奴隷に変な鳴き声で鳴いた。
男奴隷は、一旦部屋を出るが、何かを持って部屋に戻ってきた。
女奴隷は男奴隷からそれを手渡されれると、女奴隷はそれをメイに与えた。
それは、あの部屋にあったぬいぐるみの一つ。
「デス! アルフレッドッ!」
それは、メイのお気に入りの一つの人形。馬の人形である。
人形を与えられたメイは静かになった。安心したのか男奴隷と女奴隷も部屋を後にした。
メイはアルフレッドに話かける。
「アルフレッド。あなたもここに連れてこられたデスか・・他のみんなはどうしたデス?」
 みんな他の部屋で幽閉されています。でも皆元気です。
 みんなメイ様を救おうと、今計画を立てているところです。
「デス!本当デスか! 私はココデス! 囚われの姫はここにいるデス!助けに来るデス!」
 ええ。皆必ずここに来ますよ、メイ様。だから元気を出して、待っていて下さい。
「デスン・・わかったデス。メイはここで皆の救いを待つデス」
そうこうしているうちに、夜がふけ、メイは深い眠りについた。
次の日、メイはある声で目が覚めた。デフンデフンという汚らしい声。
聞きなれない声。あの男奴隷の声?そう思い目をあけると、メイは恐怖の余り悲鳴をあげた。
それは隣のケージに居た。
実装石。自分以外で見る初めての実装石。緑の目と赤い目。
気味の悪い口元からはデスデスと声を不気味な声をあげている。
そんな実装石が隣のケージにいるのである。
昨日は、この部屋にケージなど自分が入っているケージ以外はなかった。
きっとメイが眠っているうちに、ケージ毎、この部屋に運ばれたのだろう。
メイにとっては、そんなことより、初めて見る同属に恐怖を感じた。
「デデデ・・何デスか、おまえは!」
そう問いかけるメイに、その実装石は答えた。
「そういうおまえこそ、誰デスか? ここは何処デスか! 私の奴隷は何処デスかッ!」
喋った!当たり前の事だが、それにメイは驚愕した。
メイは物心ついた時には、既に女奴隷がメイを世話していた。
メイは外の世界という物を知らない。
無論、同属という種に会ったこともなければ、会話も無論した事がなかった。
メイの世界には、絶対的な権力をもつメイ自身と、メイにかしずく女奴隷。
そしてメイの支配下にいる「ぬいぐるみ」たちで構成されている。
そのメイの世界に、この数日、大きな変化が訪れようとしている。
昨日あった男奴隷。
そして、今目の前で、デスデスと声を上げている生き物である。
しかし、なんと不細工な生き物であろうか。メイは思う。
アンバランスな両目に、気味の悪い涎を垂らす開けっ放しの口元。
黄色い歯並びの悪い歯。丸々と肥えた垂れた頬。
メイは、まじまじと鏡で自分の姿を見たことはないため、
メイは、この生き物を同属であることを理解していない。
 何デスか?この気味の悪い生き物は・・・見た途端悪寒が走ったデス。
 しかし、私が話す言葉は理解しているようデス。知能は少し高そうデスが、
 品位はなさそうデス。何デスか、あの緑の汚い服は。私のこの白いドレスと
 比べると、まるで雑巾のようデス。汚らしい生き物デス。
そう考えると、その生き物が滑稽で憐れな姿に見え始めた。
「デププププ♪」
メイは隣の実装石に向けて、侮蔑の笑みを浮かべる。
メイはわざと自分が着ている白い洋服を見せびらかすように、ひらりと一回転する。
隣のケージの実装石は、メイがそれを自慢して笑みを浮かべている事に気づく。
そこに追い討ちをかけるように、両手でヒラヒラのスカートの裾を持ち上げて
追い討ちのように言う。
「デププププ♪ 汚らしい服デス。臭い服デス。近寄らないで欲しいデス」
隣のケージの実装石は憤った。
 何デスか。いきなりこんな処に連れてこられて目覚めてみれば
 隣に気持ちの悪い太った同属がいる。
 目が合うなり、いきなり笑われ。一体なんなんデスか!
この実装石の固体の名をサツキと呼ぼう。
サツキは男奴隷がかしずく実装石である。
このサツキも同様に、昨夜いきなり箱詰めされ、気が付けばこの部屋に運ばれていたのだ。
しかし、当面は隣のこの気持ちの悪い実装石だ。何だ、あのよれよれの白い服は。
当の本人はお気に入りみたいで自慢しているが、太った胴体であんなドレスを着れば
まるで達磨ではないか。そんな奴に、自慢されていること自体が非常に腹立たしい。
「デギャァァァァ! 何デスか!そんな服羨ましくもなんともないデス!
 糞でも食らいやがれデス!」
サツキが自らの糞をパンツから取り出し、メイに投げた。
サツキの糞は、メイの服の胸元に見事に命中した。
「デププププ♪ おまえにはそれがお似合いデス。私の糞を有り難く頂くデス!」
白い服についた緑の染みを見ては、ワナワナと震えながらメイが叫ぶ。
「デギャァァァァ! 何をしやがるデスか!この化け物! 根性入れなおしてやるデス!
 ニンゲン!ニンゲン!何をしてるデスか!早くこの生き物を駆除するデスッ!」
負けずにサツキも男奴隷を呼んだ。
「奴隷ッ!ここは何処デスか!野蛮で臭い奴がいるデス!奴隷ッ!早く来るデスッ!」
デスデスと騒ぎ立てるメイとサツキを何事かと、女奴隷がやってくる。
女奴隷の顔を見るなり、サツキが、ガタガタと震え始め、ケージの奥へと逃げ込んだ。
その姿を見るだけで、メイの心は優越感に溢れる。
サツキの恐怖心を煽るために女奴隷に告げ口を行う。
「ニンゲン!この生き物が私の綺麗なドレスに糞をつけたデスゥ!
 見るデスゥ!私のバージンロードに汚い緑の染みデスゥ!!
 こんな生き物は、早く駆除するデスゥ!殺してしまうデスゥ!」
「駆除」「殺す」という単語を聞いては、サツキはガタガタと歯を鳴らしながらも
デスゥ♪と果敢に女奴隷に媚びた。その媚び姿は、メイの目から見ても、気味の悪い命乞い
にしか見えなかった。
その姿を見ては、デププププと再び鼻で笑うメイ。
女奴隷は、メイの服についた糞を綺麗にして、メイとサツキに朝の食事を給仕をし始めた。
サツキも、女奴隷が自分に危害を与えないとわかると横柄な態度に様変わりする。
「デプププ♪私の可愛さにメロメロになったデスゥ。
 おい奴隷。そこの豚を駆除するデスゥ」
「駆除されるのは貴様の方デスゥ!ニンゲンッ!コイツを殺せェデスゥ!殺せェデスゥ!」
「殺されるのはお前の方デス!デス!死ね!死ねデス!コイツを殺すデス、奴隷ッッ!」
デスデス喚くメイとサツキを他所に、女奴隷は二人のケージに朝食の入った皿を盛る。
朝食の内容は、メイが飽き飽きしている高級実装フードだった。
メイはその朝食の内容を見るなり、サツキに向けていた罵倒の矛先を女奴隷に向けた。
「デス!糞ニンゲン!もう少し、まともな食事はないデスか!
 気をきかせて、ステーキでも持ってきやがるデス!」
ガンガンとケージの檻を揺らすメイ。
しかし、サツキは以前食していた「お徳用実装フード」と比べて、濃厚な匂いを発する
「高級実装フード」を口に入れては、思わず頬をにやけさしてしまった。
味の濃厚さ、旨み、舌触りが、まったく今までのそれと違っていた。
サツキは両手で頬張るように、夢中で、実装フードを平らげる。
「コレ…う…うまいデス〜!! うまいデス〜!! 頬っぺたが落ちそうデス〜!!」
すごい勢いで平らげるサツキを見て、メイはサツキとの食事に違いがあるのではないかと訝った。
「デスゥッッ!!糞ニンゲンッ!私にもあいつと同じ物を寄越すデスッ!!
 あいつだけ、うまそうな物を喰っていやがるデスッ!!」
叫ぶメイ。今まで食べていた食事よりも格段にうまい食事に満足するサツキ。
しかし、女奴隷は戻ってくる気配はない。
メイは苛立ちながらも、実装フードを2,3粒口に入れて、コロリと噛んだ。
不味い。口の中に広がる単調な味。
隣のケージでは、口一杯に頬張るサツキの姿が映る。ゴクリ・・・メイは生唾を飲み込む。
「うまそうデス。アイツが頬張っている物はうまそうデス…」
メイに一つのアイデアが浮かぶ。
「オイデス!このフードとそっちのフードを交換しやがるデス!
 見るデス!こっちの皿の方が、断然多いデス!」
メイの皿は、まだ手付かずの実装フード。サツキの皿は、既に半分近くがなくなっている。
「デ?」
サツキは、頬張るを止め、メイの提案に耳を傾ける。
メイの両手で掲げる皿の中の実装フードに、サツキは興味を示した。
どう見ても、今サツキが食している実装フードと同じ物だ。
サツキの皿の実装フードは既に半分以上が、サツキの胃の中に納まっている。
対して、メイの持つ皿の実装フードはまだ山盛りだ。考えるまでもない。
「イイデス。交換してやってもイイデス。但し、先にその皿を寄越すデス」
デプププ♪馬鹿な生き物デス。メイはそう思った。
こんな不味い実装フードを交換してくれるなど、たかが知能は知れていると思った。
メイは、これからの生活で、この生き物を虐めて暮らす楽しみを覚えた。
これからは、毎日このように騙して食事を交換させよう。
そして、毎日この生き物を騙して楽しく暮らすのだ。これはいい。
ぬいぐるみを虐めるより、何倍も楽しいではないか!
メイは皿を隣のケージへと入れた。サツキは皿を受け取り、中の実装フードを口に入れる。
「う・・うまいデス!やっぱり最高デス!こんなうまい食べ物は生まれて初めてデス!」
やはりうまそうに実装フードを平らげるサツキ。
サツキは、代わりに自分の皿を渡すことを忘れて、実装フードに舌鼓を打った。
それを呆然と眺めるメイ。
「…ッ!!…デスッ!何をしてやがるデスか!早く貴様の皿を寄越しやがれデスッ!
 間抜けデス! ノロマデス! 早くしやがれデスッ!」
サツキが動き始めたのは、メイの皿の実装フードを平らげ、ゲフゥ・・とゲップをした
後であった。
サツキは満足した表情をしながら、最初にこのケージに女奴隷から渡された
実装フードが半分ほど残っている皿に向かってゆっくりと歩き、
その皿の上に両足を跨いで屈み、パンツを下ろた上で排便行為を行った。
 (ぶり・・ぶりりりぶりぶりっ)
サツキは、自らの糞がこんもりと盛られた皿をケージの向こうのメイに渡す。
「ゆっくり味わうデス。ゲプゥ・・・」
そういって、ケージの奥へと戻り、鼾をかきながら眠りに入った。
 プル…プル…プルルルルッッッ!!!
眉間とコメカミがプルプルと高速で揺れているメイは、しばしの沈黙の後、叫び出す。
「デ・・・デデギャアァァァァッァァ!!!!!」
メイは、糞が盛られた皿を思いっきりケージの壁へぶつける。
その反動で皿が跳ね返り、零れた糞が、メイの頭の上に振って来た。
「デデッ!!・・デズァァァァ!!!」
服の糞を払おうと手で糞を掴むが、服に糞が滲む。
その手を綺麗な生地で拭くため、糞がまた服に広がる。
それを数回繰り返すだけで、メイの服は糞だらけになる。
「デデッ!! デスゥ!!! デスゥ!!!」
メイは、涙目で下唇を噛む。
「デス・・デス・・デス・・・殺すデス。殺るデス・・殺ってしまうデス。
 アイツ・・・許さないデス!」
デスッー!デスッー!と怒りに任せて叫びまくるメイ。
満腹のため、横になり腹を掻きながら屁をこくサツキ。
「デスッー!デスッー!デスゥゥゥッーー!!!!」
メイは1時間近く、叫び続けた。しかし、状況は何も変わらない。
不幸デス・・メイは思う。薄幸の美少女デス・・・メイは嘆く。
 メイ様・・気を確かに!
「デスゥ・・アルフレッド」
メイの空想の世界の住人である「ぬいぐるみ」のアルフレッドがメイを慰めた。
「お前達だけデスゥ。私の味方は・・・。嗚呼・・早くここから脱出して、
 元の部屋に戻りたいデス。お前達と、また楽しく暮らして生きたいデス」
 メイ様。きっとその願いは適います。僕達に任せてください。
「デププププ・・・・」
隣のケージの生き物が笑った。今のメイの一人芝居を見て、せせら笑ったのだ。
「滑稽デスゥ♪一人でブツブツ独り言デスゥ〜頭がおかしくなったデスゥ〜♪」
「デ・・・デデデ」
 メイ様。我慢です。絶対に私達が、メイ様をお救いいたします。
「ア…アルフレッドォ…」
今まで虐待の限りを尽くしてきたぬいぐるみ達。
そのぬいぐるみ達がメイを助けると言っているのだ。
「早く救出して欲しいデス。変な生き物も出てきて気持ち悪いデスゥ。
 救出まで、どれくらいかかるデスか?」
ボソボソと人形のアルフレッドに話しかけるメイを、尻を掻きながらデププと笑うサツキ。
「気持ち悪いデスゥ。一人でブツブツと病気のようデス。頭がおかしいデスゥ♪」
「デギャァァァァァァァ!!! 殺してやるデスッ! ハラワタ裂いて、轢き出してやるデスゥ!」
「やれるものならやってみるデスゥ♪ 知障〜♪」
「ニンゲンッ!! ニンゲンッ!! 来るデスッ!! こいつを駆除するデスゥ!!」
「デデッ!! 駆除は困るデスッ!! 奴隷ィ!! 奴隷ィ!! こいつを黙らせるデスゥ!!」
「ニンゲンッ!!」「奴隷ッ!!」
「〜〜〜〜ッ!!」「〜〜〜〜ッ!!」
女奴隷の主人メイ。男奴隷の主人のサツキ。
二匹の奇妙な生活が始まった。
(続く)