『実装石マルチ2』
「デギャァ!? デギャァ!? デッデギャァァァァァーーッ!!!!」
マルチの絶叫がコンクリート張りの地下室に木霊する中、俺は実装叩きを手に取り、
それを「ぶんっ!!」と宙に凪いで、その感触を確かめていた。
「デギャァァッ!! デギャァァァーーーッ!!」
服の奥に入ってしまった炭火を消し去ろうと、コンクリートの地面を転げまわるマルチ。
既に炭火は、彼女のスカートの下から転げ落ちているのだが、火傷の痛みが彼女を苛むのか、
マルチはまるでねずみ花火のように地面を転げまわり続けている。
その転げまわるマルチの背に向けて、俺は実装叩きを叩き込む。
「デェッ!? デェッ!! デェスァッ!? デギャァァッ!!」
突如、背中に発生した痛みに驚き慄き、マルチは体をくねらせながら、のた打ち回る。
俺は容赦なく、マルチに実装叩きを打ち込んでいく。
「デッ!? デェッ!! デエェェッ!! デギャァァァーーーッ!!」
背中や肩。
「デッ!! デスァ!!」
頭や腰。腕。足。胴に頬、そして鼻頭。
「デピァァァッ!! デフィィィィッ!!」
マルチは両手で頭を抱え、足を畳み、まるで亀のように丸くなる。
「デッ!! フィッ!! スァッ!! ダッ!!」
背中に実装叩きを打ち込む度に、マルチの肺から鼻腔を通って空気が漏れ出て、
変な楽器のような音を奏で続けている。
久しぶりの肉を打つ感触に、俺も少々高揚しているようだ。
手加減を加えるつもりが、何時の間にか、息も荒く上がり始めている。
「ふぅ………」
俺は少し息をついて、実装叩きを肩に担いで、マルチの様子を見る。
「……デッ!! …デデデッ!! …デデデッ!!」
亀のように丸くなったマルチは、パンコンを大きく振るませて、小刻みに震えていた。
今までぬるま湯のような飼い実装の生活しか送ってこなかったのだろう。
初めて受ける理不尽な痛みに、何が起こったかも理解できずに、ただ恐怖のため、
ガチガチと歯を鳴らして震えるしかないようだ。
パンコンの周辺には、円状に湯気を立たせた水溜りがコンクリートの上に広がっている。
マルチの小便だ。
俺はそんな尿溜まりを歯牙にもかけず、マルチに近づき、彼女の後ろ髪に手をやり
蹲ったマルチを無理やり引き起こした。
「デッ!? デギャァッ!! デギャァァッ!!」
「マルチ、見ろ。これが実装叩きだ」
「デッ!! デッ!!」(ガチガチガチガチ…)
「これが、今、おまえに痛みを与えるものだ」
俺は樫の木で作られた実装叩きを、嫌がるマルチの目の前に見せつける。
「見てろ。こうだ」(バシィッ!!)
そう言って、実装叩きを思いっきりコンクリートの地面に叩きつける。
大の大人でも、耳をつんざくような音が、四方をコンクリートで囲まれた部屋中に響き渡る。
「デェェッ!! デェェェッ!!」
「これが、実装叩きだっ!! 見ろっ!!」
(バシィッン!!)
「デェェェーーンッ!! デェェェェーーンッ!!」
何度も何度も、実装叩きを激しくコンクリートの地面に叩きつける。
マルチは実装叩きを見ようともせず、膨らましたパンコンを引き摺りながら、虐待部屋を彷徨い始める。
顔を天井に向け、ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、大声で泣きじゃくるマルチ。
コンクリートの地面にパンコンを引き摺っているため、コンクリートの地面に緑の出鱈目な
パンコン文字が描かれていた。
そんなマルチの前方を遮るようにして、俺は立ちはだかる。
「デェックッ!! デェックッ!!」
「マルチ。見ろ。これが実装叩きだ」
そう言って、再び鼓膜が劈くほどの大きな音を立てて、実装叩きでコンクリートを穿つ。
(バシィッ!!)
「デェェェーーーッ!! デェェェーーーッ!!」
踵を返し、後方へと再び逃げるマルチ。
「顔をそむけるな!!」
(バシィッ!!)
「デズァァァ!? デズァァァ!!!!」
飼い実装として暮らして来たマルチ。
恐らく今受けている痛みは、彼女の理解に及ばない種の出来事に違いない。
只痛みに対して、本能を持って泣きじゃくる彼女の行為は、飼い実装として至極当たり前の反応だ。
これからマルチに虐待を課す前に、まず最初にマルチに理解させない事がある。
それは、今の状況を冷静に正しくマルチに理解させる事。
 ステップ1 『ロールを理解せしめる』
俺が長年虐待を通して学んだステップの導入部分だ。
自分がはっきりと「虐待」されているということを理解できない実装石は、状況が理解できず、
早めにストレス死や妄想の殻に閉じ篭ってしまう事が多い。
正確に理論的に、この場における役割(ロール)を理解させることが、導入には大事なのである。
「マルチ。見ろ。これが実装叩きだ」(バシィッ!!)
「デッ!? デッ!?」
マルチはガチガチと奥歯を鳴らしながら、俺が上下に振る実装叩きの動きを、
顔を上下に振り、その血走った瞳孔が開いた両目で追っている。
「これが実装叩き。おまえに痛みを与えているものだ」
「デェッ!?」
そのマルチの目の前に、実装叩きを十二分に見せつける。
「そして、これが実装叩きを握っている腕だ」
そう言いながら、次は俺の右腕をマルチに見せつける。
「この右腕は、俺の右腕。つまり痛みを与えているのは俺だ!!」
(バシィッ!!)
再びマルチを実装叩きで打ち始める。
「デェックッ!! デェェェッ!! デェェェェーーンッ!!」
「見ろ!! 俺の顔をっ!! 痛みを与えてる実装叩きを持つ俺の顔をっ!!」
マルチは再び頭を抱えるようにして、ブリブリと下着を天に向けて丸まり始める。
「デスンッ!! デスンッ!! デェックッ!! デェェェェーーンッ!!」
暗い裸電球の地下室にマルチの悲鳴が木霊する。
この地下室でいくら叫ぼうが、近所にその声が漏れることもない。
俺はその地下室に響くマルチの悲鳴を耳にしながら、その実装叩きを持つ腕にさらに力を込めた。
俺は愉悦の笑みを浮かべながら、マルチが気絶するまで、その日は彼女を打ち据え続けた。
筋肉痛だ。
我ながら大人気ないとはこの事だ。
久しぶりに握った実装叩きのためか、マルチの悲鳴に感化したのか、
もう飽きてしまったはずの虐待の血が騒ぎ始めたのだろうか。
昨晩は恥ずかしながら、気が高ぶって寝付きも悪かったほどだ。
俺は痛い右腕を回しながら、己を自省しながらも、マルチの様子を見るべく地下室へと降り立った。
地下室の扉には、小さな窓がある。
そこを開ければ、扉を開けなくとも、中の様子は伺い知ることができる。
暗闇の中、小さく光る赤と緑の光りが小刻みに揺れている。
「…………ッ!!」
「よぉ」
「デェェェーーーッ!! デェェェーーーッ!!」
小窓から覗いた俺の目と合っただけで、マルチは就寝用に与えた黴た毛布を放り投げて、
地下室の四方を駆け回りはじめた。
昨晩、気絶する前に打った蜂蜜のお陰で、彼女は元気を取り戻していたようだった。
それよりも俺の心を安心させたのは、俺の顔を見て逃げた、この事実だった。
どうやら、1日の折檻だけで、俺を「痛みを与えた者」とマルチは理解できたらしい。
「痛みを与える者」と「痛みを受ける者」
虐待のプロセスには、この役割を理解させる事が重要になる。
この一事を外すと、これから続ける虐待の位置付けが微妙にずれて行く事になるのだ。
(ガチャ…)
鍵を廻して、コンクリートの地下室へと足を踏み入れる。
「デスァ!? デスァ!! デフィィッ!!」
全力で狭い部屋を駆けたマルチは、そのコンクリートの壁に顔面を思いっきり殴打して倒れる。
「デスァッ!! デフィィーーッ!! デフィィィーーッ!!」
倒れながらも、その場で必死に穴を掘り続ける仕草を繰り返す。
ははは。可愛いじゃないか。
「デッスッ!! デッスッ!!」
次に部屋の隅に手を掛けながら、その短い足で跳躍を繰り返している。
「デスンッ!! デッスンッ!!」(ぺしん、ぺしん)
逃げようと必死なのだろう。
その短い手で、必死に壁を掻くようにして、迫り来る恐怖から逃れようとしている。
「デスゥ〜〜〜ン♪ デスゥ〜〜〜〜ン♪」
両手を壁にかけて、喉を天に垂直に逸らして、口を尖らせながら甘い声で泣き出し始めた。
俺は面識はないが、逸れた飼い主を求めているのだろう。
久しぶりの虐待に手を染める俺に、中々、小憎い演出をするじゃないか。
俺は生唾を飲み込みながら、ロッカーにしまった実装叩きを取り出して、それをマルチに見せびらかした。
「デッ!?」
見せびらかした実装叩きを見た途端、マルチの表情が固まる。
開いた兎口は、これでもかと縦に開かれ、その口の中のマルチの赤い舌が痙攣したかのように
チリチリと震えていた。
「じゃ、昨日の続きをやるぞ」
「デェェェェッッ!!! デェェェェェッッ!!!」
ますますマルチの壁を掻くスピードが速くなる。
「デスゥゥゥゥゥーーーッ!! デスゥゥゥゥゥーーーッ!!」
マルチの哀しい助けを求める声が、部屋中に響き渡った。
(続く)