『としあきvs飼い実装』
 
内閣府の調査では、2007年フリータの数は200万人を越え、ニートの数は100万を越えようしている。
ニートやフリーターという定義がされるようになってきたのも、格差社会が背景にある。
働きたくても働けない。
また働いても裕福になれない。
結婚したくても、子供を作りたくても、お金がなくてできないのだ。
若者を中心にそういった層が増えると、必然的に結婚年齢も高齢化し、出生率も下がって行く。
ひいては、日本の国力の低下にもつながるのだ。
そんな明日の見えない日本。
今日も虹裏で一日を過ごしたとしあきが、意を決してハローワークへと足を向ける。
「糞!俺様に相応しい仕事があるはずなんだ!」
しかし、探せど探せど9−5時残業なし手取り30万の単純作業の職種は見つからない。
としあきは来年は35歳だ。
無職のまま、資格もないまま、35歳を迎えるのはどうしてもまずい。
「糞。少しだけ条件を下げてみるか。しかし、糞…」
その頃、都内の高級マンションに住まう飼い実装ミランダちゃん。
「ご主人様〜♪ お洗濯手伝うデスゥ〜♪」
「ああ、すまないな。ミランダ」
「さ。おまえ達。ご主人様の仕事を手伝うデスゥ〜」
「「「テチューーー!!」」」
「終わったら、ご褒美に金平糖ステーキだぞ」
「デデ!! ミランダ、頑張っちゃうデスゥ〜♪」
「ビルの外壁メンテナンスの仕事ですか…」
「もう君の年齢では、こんなぐらいしか残ってないよ」
「ぅ… ぅぐぅ」
としあきは今日もハローワークで惨敗。
何度も何度もATMで貯金残高を見るが、残高は増えるはずもない。
夢を見て東京に出て15年。
計画では、高級マンションに住み、夜景を見ながら、ガウンを着て夜景を見ているはずだった。
しかし現実は帰ってみれば雨漏りのする築20年の木造アパート。
「夜景が綺麗デスゥ〜」
ミランダはうっとりと窓から見える都会の夜景を見る。
ミランダはこのマンション最上階から見るこの東京の夜景が好きだった。
煌びやかに瞬くネオンの光。そして、それらが一つの生物のように蠢動する街。
風呂上りのガウンを羽織り、手には90年モノのなんたらワイン。
生きている。私は生きている。
この瞬間が、ミランダにそう思わせる瞬間である。
「糞。こんな日は寝るに限るぜ」
としあきは、ベラベラの引っ付いたプレイボーイを取り出し、愚息を掴む。
童貞35歳。
女子に触れたのは学生時代のフォークダンス以来だ。
同世代の奴らなら、仔を成していて当然の年齢だ。
「デスゥ〜ン♪ また子供が生まれたデスゥ〜ン♪ これで今年12匹目デスゥ〜♪」
ミランダは歓喜に震えていた。
仔を産む喜び。己の分身をこの世に生み出す喜び。
そして生を。この世の逢瀬を。血を分ける家族と分かち共有できる喜びを!
「おまえ達〜〜♪ この仔が新しいおまえ達の妹デスゥ〜ン♪」
ミランダは膜を舐め取り、新しい小さな家族を聡明な姉たちへ紹介する。
「畜生。気が滅入る」
何度刺激しても立たない。3度に1回しか自慰すら成功しない。
こんな苛立つ時は、虹裏で煽るに限る。死ね。市ね。みんな死んでしまえ。
「はいはい。おまえたち。ママが遊んでやるデスゥ〜♪」
ピンクのネグリジェに身を包んだミランダを取り囲む天使のような笑顔を振りまく仔実装たち。
「ママー!! ママー!! 玩具で遊んで欲しいテチィ!!」
「ママー!! 絵本読んで欲しいテチィ!!」
「デスゥ〜ン♪ 可愛くて、可愛くて、たまらないデスゥ〜ン♪
 ご主人様ぁ〜。ミランダ。13匹目が欲しいデスゥ〜ン♪」
内閣府の調査では、2007年フリータの数は200万人を越え、ニートの数は100万を越えようしている。
ニートやフリーターという定義がされるようになってきたのも、格差社会が背景にあると言われている。
おはり