『みくるちゃん』
「蛆ちゃん。ぷにぷにがいいレフ〜♪」
「え?ぷにぷにでいいのか。もっと高価なモノ買ってやるぞ」
俺が飼っている蛆実装の誕生日に、俺はプレゼントをやる事を提案した。
しかし、蛆実装は物欲という物がないのか、俺に強請ってきたのはぷにぷにだった。
「ぷにぷにレフッ!! ぷにぷにレフッ!!」(ピス〜ッ!! ピス〜ッ!!)
鼻をピスピスさせながら、仰向けで強請るその姿は、折角俺が何かを買ってやろうという出鼻を挫く間抜けさだった。
「ほらよ。ぷにぷにだ」
「レッ!! レフゥ〜ン♪ レフゥ〜ン♪」
俺は蛆実装が似合うであろう、ピンクのレースがついた蛆実装服や、甘い外国産の金平糖セットなど
買ってやる品々を頭に描いていたのだが、そんな飼い主の心知らずか、単なるぷにぷにに
頬を赤らめて、ぶりっぶりりっと、水状の糞を漏らす蛆実装を冷たい目で見やった。
「ママッ!! もっとレフッ!! もっとレフッ!!」
「………ほんとにいいのか、これで?」
「レフゥ〜ン♪ レフゥ〜ン♪ 蛆ちゃん。幸せレフゥ〜ン♪」
蛆実装のお気楽さには、まったくあきれたものだ。
そう思い、蛆実装の質素な誕生日は過ぎた。
次の日―――
「ママッ!! ママッ!!」
蛆実装が、水槽の中から俺を呼ぶ。
「ん?どうした?」
「ママッ!! 蛆ちゃん、ぷにぷにして欲しいレフゥ〜♪」
「すまんな。今日はお客様が来るんだ。お客様が帰ってから、ぷにぷにな」
「レ… レフゥ〜…」
蛆実装は寂しげな背中を見せて、水槽の中なか動き回っている。
後で、一杯ぷにぷにしてやろう。
そんな事を考えているうちに、俺の親友である利明が自分が飼っている成体実装石を連れて、やって来た。
利明は、俺の仲間内でも大の愛護派であり、出かける時は、いつも彼女を連れて出かけるのが常だった。
「やぁ、みくるちゃん。今日も元気だね」
「デェ…」
みくるちゃんは、くっちゃくっちゃとガムを噛みながら、デー…と、玄関先に置いてある
俺の脱いだ靴の匂いを嗅ぐのに夢中だった。
そんなみくるちゃんを置いて、俺達は昔話に花を咲かせていた。
みくるちゃんは大人しい成体実装石なので、そうオイタはしないので、家で自由にさせていた。
「デ…?」
俺は、その時、話に夢中で気がつかなかったが、みくるちゃんが何かに気付いたらしい。
「…………」
みくるちゃんの目は、蛆実装が入った水槽に向けられていた。
「レフ〜… ママ… ぷにぷに、まだレフ〜」
「デッ!!」
だんっ!と水槽に張り付き、ギョロリと視線を蛆実装に向けるくるみちゃん。
「レッ!? レピャァァァッッ!? レピャァァァァッッ!?」
「デッ!! デデッ!!」
蛆実装に興奮したみくるちゃん。
短い手足を駆使して、棚の上へよじ登ろうとする。
「レピャァァァ!! ママッ!! ママッ!! 変なのっ!! 変なのっ!! いるレフゥゥッ!!!」
「デスッ!! デスァ!! デスァ!!」
みくるちゃんは、器用に棚によじ登り、水槽の蓋をこじ開けて、蛆実装を手に取ろうとする。
「ママッ!! ママッ!! レピャァァァ!! レピャァァァァッ!!」
「デフ〜!! デフ〜!!」
「蛆ちゃん、食べられるレチィ〜!! レピャァァアアア!!」
「デスア!! デスア!!(バリッ!! ムシャッ!!) ング… ング…」
わずか数分の出来事だった。
「あ〜、楽しかったよ。利明」
「ああ、また来るな。お〜い、みくるぅ〜。帰るぞぉ〜」
「デ!!」
居間で大人しく絵本を読んでいたみくるちゃんが、利明の足に抱きついて来る。
「デプゥ〜!! デプゥ〜!!」
「なんだ、こいつ。興奮してるな」
みくるちゃんの前掛けは、べっとりと赤と緑で汚れていた。
「おい… 利明」
俺は震える手で蛆実装が入っていた水槽を指差す。
血塗られた水槽と、興奮したみくるちゃんの汚れた前掛けを見て、利明は全てを悟った。
「みくる… おまえか」
「デプゥ〜!! デプゥ〜!!」
興奮したみくるちゃんは、利明の変わった語気に気付かず、相変わらず利明の足に股間を擦り付け、唸っている。
「蛆っ!! 蛆っ!!」
俺が泣き叫びながら、水槽の中を覗き、絶叫する。
「みくるっ!! 答えろ!! おまえがやったのかっ!! みくるっ!!」
問い詰める利明。
「デプゥ〜!! デプゥ〜!!」
「馬鹿っ!! とぼけるんじゃないっ!!」(ぱしんっ!!)
「………デ」
「おまえはぁ… 取り返しのつかないことを… してしまったんだっ!!」
仔実装の頃より、蝶よ花よと育てられたみくるちゃん。
今まで利明から体罰らしい体罰を受けてこなかったみくるちゃんにとって、先ほどの頬へのビンタは、
みくるちゃんにとって、ショックだったらしい。
「……デ デェェ…!! デェエエエエン!!」
「泣いてもっ!! 死んだ命はっ!! 戻らないんだっ!!」
さらに頬を打つ利明。なきじゃくるくるみちゃん。
「デェック!! デェック!! デゲェエエエエ!! デゲェエエエエ!!」
ない指を口の中に突っ込み、みくるちゃんは泣きじゃくりながら嘔吐する。
「デスン… デスン…」
みくるちゃんは、胃液の中の既に事切れた蛆実装の肉片を掴みながら、必死に両手で合わせて
修復を試みていた。
おはり。