『レストラン』
ある日の昼下がり。 今日の昼飯は、びっくりドンキーでランチでも洒落こむかと考えながら散歩していると、 公園の野良実装石たちが、俺に向かって集まってきた。
「デスデス! 腹が減ったデス! 糞ニンゲン!」 「デスァ! 高貴な私にステーキを献上するデスゥ!」 「ママァ。この糞メガネは奴隷テチィ?」 「そうデス。こいつは我が家に代々仕える奴隷デッスゥ〜ン♪」
知らない間に俺の出処が奴隷にされてしまった気だるい午後の昼下がり。 何時もなら蹴飛ばして、こいつらを蜘蛛の子のように散らすわけだが、それでは捻りがない。
「デスァ! ステーキはどうしたデス! 早くもってこいデス!」 「ステーチテチ? ステーチテチ?」 「童貞奴隷! ステーキはレアがいいデス!」 「レアレフ? レアレフ?」
「よぉし。おまえ達。今日は俺がステーキを献上してやるぜ」
「デデ! 本当デスゥ?」 「デッス〜ン♪ ステーキデスゥ♪ お肉デスゥ♪」 「ママ! ママ! 蛆ちゃんも連れて行っていいテチィ?」
「おおいいぜ。蛆ちゃんも友達もみんな連れてきな」
俺の優しい言葉で、目が輝き、満面の笑みを浮かべる仔実装。 噂が噂を呼び、ものの数分でこの公園の全ての実装石が俺の周りに集まった。
俺はハーメルンの笛吹きよろしく彼女らを連れて、一路びっくりドンキーへと向った。
「いらっしゃいませ… ってお客様!」
店員は俺の後ろに続く総勢108匹の実装石様ご一行に目を白黒させて、俺に困った顔を見せてくれる。
このファミレスは、最近の愛護派ブームに乗って、保護者同伴なら実装石も同席可能なファミレスなのだ。
全席98席を誇るびっくりドンキーの座席が全て実装石たちで埋まってしまった。 皆始めて入るファミレスに興奮し、顔は紅潮、耳はピクピク、鼻の穴はピスピス。 中にはパンコンし始める実装石はざらで、机の上のポケットシュガーなどを口に入れて 包装紙のまま噛み始める始末だ。
「よおし、おまえら! 好きなモノを頼んでいいぞ!」
それぞれに店員がメニューを手渡す。 そのメニューに描かれる夢のようなステーキ(注意:ハンバーグ)に大興奮な彼女たち。
「このうまそうなステーキを持ってくるデスゥ!」 「デェエエ!カレーバーグデッシュ大盛りデスゥ!」 「蛆ちゃん、メリーゴーランドレフ! メリーゴーランドレフゥゥ!!」
次々に入るオーダー。 食べきれるはずも無いのに、1匹あたり平均5.3食も注文をしている。
「デェ! デェ! デェ!」
アルコールも入ってないのに酔っ払ったように机の上で自慰を始めるモノ。 店員のスカートを覗き込み、マラを擦り始めるマラ実装。 蛆ちゃんは灰皿の中に入り込み、1匹ぐるぐると無限ループを楽しんでいる。
「来たデスゥ! 来たデスゥ!」
最初のオーダーが通り、花丸ハンバーグが通路におまみえする。
「デェ!! それは高貴な私のデスゥ!!」 「何を言ってるデス!! ゲスなおまえは草でも食ってろデス!!」
待っていれば自分のオーダーが来るはずなのに、最初のテーブルにおかれた ハンバーグデッシュに、店の約半数の実装石たちが殺到する。
「ははは。ステーキは逃げないぞぉ」
俺は煙草に火をつけて、一つのハンバーグに殺到する実装石たちを見て笑う。 混乱は最初だけで、次々にやってくるオーダーに安心したのか、実装石たちは銘々の皿のみに 集中し、あまりの旨さにパンコンは当たり前。 ガンガンと机に自らの額を打ち据えて流血するのはザラで、自らの子供が口にモノを突っ込みすぎて 窒息しているのもお構いなしに、目の前の夢の味に舌鼓を打っていた。
「さぁて。そろそろ帰るか」
腹もこなれた。家に帰ってジャンプの続きでも読むか。
「あ。料金は別々で」
俺は自分が食い終えたバーグデッシュ150gの代金を払い、レジを後にした。
次は回転寿司でも連れて行ってやろう。 明日無事に生きていられたらな。そう思い、俺はびっくりドンキーを後にした。
おはり