『テレビ』
「ご主人様は今日は残業で遅くなるデスゥ。お前たち、早く寝るデスゥ」
「ママァ。テレビ見たいテチィ」 「そうテチュ! 華麗な一族が見たいテチュ!」 「レフ〜 レフ〜」
「仕方のない仔たちデスゥ。お前たちはリモコン操作がうまくできないデス ここはママに任せるデス」
親実装は、テレビのリモコンを取り、テレビをつける。
「すごいテチィ!ママは天才テチィ!」 「ママの魔法は世界イチテチュ!」 「レフ〜 レフ〜」
「ママにかかれば、こんなものデス」
親実装は得意げにリモコン操作を続ける。
「こんなこともできるデスゥ」
次々と変わるチャンネル。 仔実装たちにとっては、まるで夢の紙芝居のようで、大興奮で糞も漏らし気味だ。
「テェ! すごいテチィ! すごいテチィ!」 「ママ! 音も大きくできるテチュ?」 「レフ〜 レフ〜」
「音を大きくするデスゥ」
親実装は、一通りの操作はマスターしていた。 音を大きくすれば、負けじと仔実装たちも大声で歓声をあげた。 負けじと親実装も、音声を大きくする。
「テェ? ママ音しなくなったテチ?」 「ママ? どうしたテチュ?テレビ真っ暗テチュ」 「レフ〜?」
「あれ?おかしいデス」
それもそのはずだ。 テレビは外部出力に切り替わり、画像は真っ暗になってしまっている。 それも気づかず、音声をMAXまで絞る親実装。
「あ。わかったデス。このボタンデス」
(ポチ…)
「デギャァァァァァァァ!!!!」 「テチャァァァァァッァ!!!」 「チュワァァァァァァァ!!」 「レピャァァァァァァ!!」
閑静な住宅街にふいに轟く獣声のような大音量。 仔実装たちは届かぬ手を両耳に当て、涙を流しながら悲鳴を上げる。 蛆ちゃんはすでに白目を向き、失禁状態で仮死寸前だった。
「デギャァァ!!デギャァァァ!!」
親実装はリモコンを落としてしまい、もんどり打つ。 その拍子で、リモコンから電池がポロリと落ちてしまう。
「ママ! ママ! 耳がぁ! 耳がぁ・・!」
「し… しっかりするデス! 今、ママが何とかするデス!」
震える手でリモコンを持ち、ぺしんぺしんと「音量小」のボタンを押すを うんともすんとも言わない。
「デデッ! 何でデスゥ! おかしいデスゥ!」
何度も繰り返すが、電池が抜けているリモコンはウンともスンとも言わない。
その内、仔実装たちはお漏らしをし始め、泣き始める。 親実装もわけもわからず、ブリブリと排便し始める始末だ。
閑静は住宅街に響く大音量に近所の住民たちも騒ぎ始めた。 これはいけない。ご主人様に迷惑がかかってしまう。
親実装はパンコンをものともせず、テレビに近づき、直接操作を試みる。 しかし、主婦層でも操作のわからぬ最近のAV機器だ。
見知らぬボタンを押すうちに、DVDプレイヤーに電源が入り、 テレビは外部入力に切り替わり、ご主人の秘蔵のDVDが再生し始める。
「デデ! これで大丈夫なはずデ… デッ! デデッ!」
閑静な住宅街に響くご主人の秘蔵のDVD。
そのうち、残業から帰った主人は必死の形相で家に駆け戻ったという。 飼い実装たちは、その日のうちに折檻を受け、生きたまま翌日の生ゴミへと出された。
おはり