『愛護派』
俺の名はとしあき。
そうとうな愛護派だ。
俺の中には愛護派の血が流れてるんだなと、つくづく思うときがある。
今日もそうだ。
公園で倒れていた仔実装を、拾わなくてもいいのに、わざわざ介抱なんてしている。
栄養ドリンクを数滴垂らし、仔実装の泥だらけの顔を、タオルで拭ってやる。
栄養ドリンクが効いたのか、仔実装が目覚めた。
目覚めたら、そのまま公園へ返す?
愛護派の俺には、そんなことは無理だった。
テスンテスンと、母が死んだ事、姉が虐待派に捕まった事。
そんな身の上を、涙ながらに語る仔実装を、どうして放っておけようか。
「ニンゲンさん。飼って欲しいテチィ…」
そんな目で見つめられると、俺の中の愛護派の血がどうしようなく騒ぎやがる。
「でもな… もう俺のうちには、10匹近くの実装石がいるんだ」
そうなのだ。愛護派の俺は、行き倒れになりそうな実装石を見つけると、とことん保護してしまうのだ。
そいつらは、介抱後、無論俺の家に住み着き、今では俺の心を癒してくれる家族となっていた。
「おまえ。他の奴らと仲良くできるか?」
「テェ!! できるテチ!! 仲良くするテチ!!」
「ああ、そうだな。家族は仲良くしなきゃダメだ」
「テェ…!? か… 家族テチィ?」
「そうだ。家族だ」
「家族」という言葉を聞き、その仔実装は、また泣き出してしまった。
それもそうだ。先ほど母と姉を失ったばかりと言っていたじゃないか。
俺は心を痛めながらも、隣の部屋から、その仔実装を心配そうに覗き込んでいた実装石たちに声をかける。
「おまえたち。出て来いよ。今日から、新しい家族だ」
「デ?」
「デデ?」
ぞろぞろと、成体実装石や中実装が、その寝込んだ仔実装の周りに集まってくる。
「よろしくデスゥ。今日から、家族デスゥ」
「テェ!! 家族テチィ… テェエエエエン!! テェエエエエン!!」
「優しい仔デスゥ。これからは私達と幸せに暮らすデスゥ」
実装石は、家族を大事にする種族である。
愛護派の俺でなくとも、赤の他人を家族として迎え入れるこの光景を見るに、涙を落さぬ奴は居ないであろう。
「よし。名前をつけなきゃな」
「テェ!! 名前テチィ!?」
名前という概念すらなかった野良だった仔実装は、いきなり名を授けられることに驚愕し、
ワナワナと震え出しては、目に大粒の涙を浮かべ始めた。
「デェ… 本当に純粋な仔デスゥ…」
「きっと、私達と仲良くなれるデスゥ」
「テェ…」
俺は涙ぐむ仔実装の頭に手を載せ、名前の候補を頭にめぐらした。
「そうだな… おまえの名前は… よしっ。 ヨシキにしよう」
「テェ!?」
「いい名前デスゥ」
「そう思うだろ。マサル」
俺はマサルの頭を撫でてやる。タクヤもトオルも隣で大喜びだ。
「よろしくな! ヨシキ!」
「テェ!? テェ!?」
そんな驚きのヨシキを他所に、マサヤとコウジが俺の膝に乗ってくる。
嗚呼。なんてカワイイんだ。俺は彼らを後から抱き、芳しい汗のにおいを鼻腔一杯吸い込んだ。
俺の中には、愛護派の血が流れているんだなと、つくづく思う。
おはり。