『下痢』
「テェェェェェ……」(シャァ………)
うちの仔実装が下痢になった。 どうやら散歩中に野良実装が食べている物を喰ったらしい。
「大丈夫か…?」
「テェ……」
お尻の総排泄口は赤く爛れている。排泄物は、ほとんど水状の糞だった。
「テェェェェ……」
下着をあげるのも痛いのか、小さな悲鳴をあげて、チンボ歩きでリビングに向かう姿が痛々しい。
「お腹が減ったろ」
俺は金平糖を仔実装の手に渡してやる。
「テェ………」
いつもなら飛んで喜び腰を振るはずなのに、クンクンと数回匂いを嗅いだだけで、金平糖をポトリと地面に置いた。
「仔実装……」
もう数日は何も食していないはずだ。水分だけは無理やり取らせようと、嫌がる仔実装の口をこじ開けて、スポイトでやってきた。 スポイトを押しのけながら、仔実装はチューーーー…と水状の糞を下着の中でパンコンする。
「テェェッ!! テェェッ!!」
「こら、暴れるな! 脱水症状を起こすだろ!」
「デヂヂーー!! デヂヂーー!!」
1日に50ml。何とか暴れられながらも、それだけは与えてきた。 しかし、仔実装は固形物を取ろうとしない。そのためか見るに頬もこけ始めて来た。 俺は頑張って、実装フードをミルクで煮たりして、何とか仔実装に食べて貰えるように努力した。
「お〜い。仔実装〜」
リビングのクッションの上で、丸くなっていた仔実装が力なくテ…と鳴く。
「ちょっと工夫してみたんだ。喰えるなら喰ってみるか」
「テェ… テチュ〜ン♪」
ほかほかの湯気の出るスプーンで掬ったミルク実装フードに鼻をピクピクとさせる。
「テスン… テスン…」
仔実装は涙を流しながら、スプーンの上の実装フードに喰らいついた。
「ははは… うまいか」
「テェ!? テチュッ!!」
いきなり仔実装が海老反りになる。下着から既につるりと水状のものが染み出している。
「テェ…… テェ……」
仔実装は四肢を震わせながら、四つん這いでトイレに向かい出す。
「ま、待ってろ」
俺は洗面所の仔実装の実装おまるを持ち出し、震える仔実装の前に置いた。
「テェ…… テェェェ……」
仔実装は震える手で器用に下着を降ろし、おまるに跨り、何とも言えぬ表情で力み出す。
「テェッ! テチャァッ!! テチャァァァァッ!!」
爛れた総排泄口に下痢便が染みるのだろう。 仔実装が力む度に、目から涙を流して、俺の顔を恨めしそうに見つめる。
「頑張れ… 頑張れ」
俺はそう励ますしかない。
「テスン… テスン… テェェェェェーン!!」
仔実装は泣きじゃくり始める。泣くと総排泄口に力が入るのか、シャァァァー…と水状の下痢もこぼれる。 その痛みで泣き声は一層高くなり、ボロリボロリと大粒の涙を流し始めるのだ。
「テチュ〜ン♪ テチュ〜ン♪」
実装おまるから降り、仔実装は俺に向かって、覚束ない足で駆け寄り始めた。 排泄行為が終わったわけではない。まだ仔実装の総排泄口からは、水状の下痢が放物線を描き、 ドピュッ!! ドピュッ!!と床を汚しながら、俺に向かって駆け寄って来る。
「テチュン… テチュン… テチュ〜ン♪」
理不尽な痛み。何故、自分がこのような痛みを受けなければならないのか。 仔実装の頭では、それがまったく理解できない。理解できない上の理不尽な痛み。 理不尽な痛みは、必然的に仔実装を悲しくされる。痛い。痛いよ。何故なの。痛いよ。
「テチュゥゥゥゥ〜〜〜♪」(シャァァァァァ……)
一直線に緑の線を借家の床に描きながら、俺に駆け寄る仔実装。 この理不尽な痛みの中の悲哀に満ちた仔実装を癒してくれるのは、飼い主である俺以外になかったのだ。
「テッテロケ〜♪ テッテロケ〜♪」
俺のズボンを糞塗れにしながら俺に抱きつく仔実装のお腹を指でやさしく擦ってやると、 仔実装は気持ち良さそうに鳴いていた。