『実装3姉妹』
俺の飼っている実装石は、とても仲良し実装三姉妹だ。
俺が小学生の頃から飼って来ていた実装石の娘たちで、母亡き今は、俺の唯一の家族というわけだ。
「デッスゥ〜ン♪」 「デスゥ! デスゥ!」 「デッデ〜♪」
俺が行くところ行くところ纏わりつくようにじゃれて来る。 その仕草が可愛いたらありゃしない。
加えて、この3匹。 肉親の間でも憎しみ合い侮蔑しあう実装石という種に合って、彼女らの持つ姉妹愛というのは 筆舌に尽く難いほど麗しいことこの上ない。
1枚だけ与えたクッキーがあるとしよう。
「デ? デスゥ! デスゥ!」
長女のジョアンナは、可愛い妹たちのために、それを与えようとする。
「デスゥ? デスデスゥー!!」
次女のパトリシアは、それを最愛の末妹パルナスに与えようとする。
「デデ! デスゥ! デッスゥ〜ン♪」
聡明なパルナスは、1枚のクッキーを3つに割り、それを姉妹で分けて食べようとする。 この3匹は、家の中ではいつも一緒。 お風呂も3匹で入り、ゴシゴシと洗いっこをすれば、寝るときももちろん同じベット。 食事も同じ実装皿に盛った実装フードを食べあい、俺に甘える時も、右膝は長女ジョアンナ。 左膝は次女パトリシア。そして股間には三女パルナスがちょこんと座り、俺と楽しい 団欒の時を過ごすのだ。
そんな3姉妹だが、朝起きると、3匹とも両目が緑になっていた。 そう。妊娠するタイミングさえ、同時にするほど仲良しなわけである。
「「「デッデロゲ〜♪ デッデロゲ〜♪」」」
1匹の胎教の唄だけでも賑やかなのに、それが3匹ともなると、けたたましいぐらいだ。
しかし、天蓋孤独な俺にしてみれば、家の中が騒がしいぐらいが丁度いい。 ましてや、新しい家族が増えるのである。こんな嬉しいことはないではないか。
「デッデロ〜♪ ゥゲェ〜〜♪」
長女ジョアンナが自分のお腹を押えずに、次女パトリシアのお腹を愛しく撫でながら、 パトリシアのお腹に向かって、唄を歌っている。
「デプププ! デププププ!」
そんな優しい長女の行為に、頬を赤らめて喜ぶパトリシア。 パトリシアも負けじと、三女パルナスのお腹を撫でながら胎教の唄を歌い出す。 パルナスも、長女ジョアンナのお腹を撫でてて、最愛の姉の仔の幸せを祈りながら、精一杯この世を賛美する唄を歌った。
「デッデロ〜♪ ゥゲェ〜〜♪」 「ゥゲ〜ゥ♪ デッデェ〜〜♪」 「ボエ〜ゥ♪ デッデロゲ〜ゥ♪」
そんな幸せ一杯の三姉妹が臨月に入った。
「いいのか。洗面器、3つ用意するぞ」
それを拒否したのが長女のジョアンナだった。 寝る時は1枚の毛布。食事の時さえ一枚の皿。 全てを共有し、共に同じ時代、同じ場所を共有し合う三姉妹に取って、分娩の時でさえ、それは例外ではなかった。
浴室に水の張られた洗面器に向い、互いに露わにした総排泄口を突き出す三姉妹。
「デェ〜… デェ〜…」
息が荒くなって来た。妊娠した時期も同じであれば、出産の時もそれは同じだった。 三姉妹の両目が赤にふぅ…と変わったかと思うと、三姉妹は力み出し、最愛の我が仔を 一つの洗面器目掛けて産み落とし始めた。
テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪ テッテレー♪…
次々と生まれる我が仔たち。 長女ジョアンナは、最愛の我が仔を擁き、その膜を舐めようとする。
「デェ… デェ… デスゥ〜ン♪ デ?」
その膜を舐め取らんとする寸前、長女ジョアンナの手を制する者が居た。
「デスゥ!! デスデェス!!」
次女パトリシアだ。まるでそれは私の仔。姉さん、触らないで。と言わんばかりの目だ。 その隙に、すべて産み終えた三女パルナスが、デ?デ?と目を白黒させながら、 どれが自分の仔かわからず首を傾げながらも、1匹摘み、膜を舐めようとする。
「デデッ!! デスァ!! デスァ!!」
それを止めたのは、長女ジョアンナだ。先ほど止められた腹いせか、絶叫するように三女パルナスに取っ組みつき、 頬を殴りつけては、その蛆を奪い取った。
「デ? デ? デデ?」
殴られたパルナスは何が起こったかわからない。 ただわかるのは殴られた痛みと共に湧き上がる我が仔を守らんとする強い母性と怒りだった。
「デッスゥ〜ン♪ デデッ!? デギャアアアア!!」
その蛆を舐めんとする長女ジョアンナに噛み付いたのは、次女パトリシアだ。 それに応戦するかのように、手の中の蛆を求めて、三女パルナスも踊りかかる。
「デデッ!! デギャァアアア!! デスデェース!!」
取られてなるものか。ダンダンと怒りを露わにして、足を地団駄させる長女ジョアンナ。 その足は、18匹が蠢く洗面器にぶち当たり、狭い浴室に張られた水と共に、その中身がぶちまけられる。
「デッ!! デシャアアア!! デシャァアアア!!」 「デスァ!! デスァ!!」 「デェ!? デス!! デスデェース!!」
大の大人が座るだけでも手狭な浴室であった。 その浴室に放たれた19匹の蛆を巡り、壮絶な人生初めての姉妹喧嘩が展開された。
取っ組みあいで倒れた拍子で、緑の染みとなる我が仔。 半狂乱になりながら、その飛沫を集めるパトリシアの怒りの矛先はジョアンナにぶつけられ、 さらに取っ組み合いが展開され、無数の我が仔たちが、圧死して行く。
「おーい。そろそろ生まれたかァ?」
俺はその時、彼女たちの出産の邪魔をしては駄目だと、一人リビングでその時を待ち侘びていた。
「いいか?開けるぞ」(ガラッ)
「デ……」 「デスゥ〜…」 「デッス〜ン♪」
俺の目の前には、緑と赤が壁や天井まで飛び散った浴室だった。 三姉妹は、虚ろな目で、必死に比較的原型を止めた既に事切れている仔実装を、 奪い合うように、必死に口で舐め続けていたのだった。
おはり。