『畳の目』
家で飼っている実装石が畳の目を数えている。 「デ、デ、デ、デ…」 最近、あまり相手をしてやれなかったせいか、とても不憫に見え、堪らず声をかける。 「公園でも行くか」 そういって、奴の肩に手を置くと 「デッ!! デシャァァァ!! デシャァァァ!!」 何と、飼い主の俺に威嚇を加えてきた。 「うわ。なんだよ。吃驚した」 奴は、俺の顔を睨むと共に、畳の目に再び目を戻し、デッ!? デッ!?と眉間に皺を寄せる。 まさか、数えていた数字を忘れたから、威嚇してるんじゃないか。 「デッ!? デデッ!!」 ない指を指折り折って、畳の目と指を交互に見合い、叫んでいる。 俺の予想どおり、奴は数えていた目の数を忘れてしまったらしい。 「デギャァァ!!! デェェェーーンッ!! デェェェェーーンッ!!」 「ああ、すまないな」 気まずく声をかけるも、奴は天井を仰いで、泣き叫ぶばかりだ。 「デギャァースッ!! アッ〜〜アッアッ〜〜!!」 ぶりぶりとパンコンも膨らまし、四肢をバタつかせて暴れまわる。 「お、おい。いい加減にしろよ…」 「デスンッ!!デスンッ!!」 実装は俺の声も無視し、膨らんだパンコンを引き摺りながら、部屋の隅へと歩き寄る。 「デェックッ!! デェックッ!! デ、デ、デ、デ…」 そして、赤い泣きじゃくった目で、再び畳の目を数え始めるのだった。 俺はそんな実装を前に、頭を掻きながら、部屋の隅へ行く。 実装が数えている畳がある反対の角っこだ。 「デ、デ、デ、デデッ!?」 「一人で数えるより、二人で数えた方が早いだろ」 俺が爽やかな光る歯を見せながら答えてやると、実装は感激のあまりまた鳴き始めた。 「おいおい。さ、早くやろうぜ。日が暮れちまう」 「デッス〜ン♪」 結局、作業は深夜まで及んだ。 数えた畳の目は「1万と2405」と「デスデスデス〜♪」だった。 おはり