注)このスクは、英単語の知識をスクを読みながら取り入れようという試験的な試みです。 英語学習に興味のない方には、退屈な内容かもしれない事、ご了承ください。
『実装石タンゴ4』
「今日の英単語は【admit】デス」
便所の中で、まさに催そうとしている俺に、タンゴが便所の僅かに開いた隙間からそう言った。
「…………タンゴさん。もう少しだけ待って貰えませんか」
半分、肛門から身をひり出しながら、俺は気まずい顔でタンゴさんにそう答える。
「admitの意味はわかるデス? ご主人様」
「いや、だから人の話を聞けよ」
俺の肛門がまさしく爆発寸前の処に、僅かに開いた隙間に指を突っ込み、トイレに進入せんとする。
「答えるデスッ!! admitの意味を答えるデスッ!!」
「おい、こら、てめぇ!! 入ってくるんじゃねぇ!!」
「それデスッ!!」
顔に僅かに開いた扉の縦の型を作りながら、タンゴは俺に向って指を差し出した。
「admitは【入ることを許可する】という意味デス。 ご主人様の今の訳は否定系での回答デス。やるぅ〜♪デスゥ」
「あのぉ… 「やるぅ〜♪」でいいんで、扉を閉めて頂けないでしょうか」
「admitは許すという意味で、他の類似語には【allow】とか【permit】とかあるデス」
聞いちゃいねぇよ こいつ、と落胆するも、相手は実装石である。 マジになっても、所詮はペット。真面目に相手するに値もしないのだ。 そうと決まれば、無視を決め込み、排便に勤しむことにした。
「…………………」
「ご主人様ッ!! allowとpermitの違いデスゥ!!」
「…………………」
「わからないデスゥ? 仕方がないデス。allowは、「許可する」という意味の一般的な… デッ!? クンクンッ!!」
「…………………」
「こいつ… 糞漏らしてるデスゥ…」
タンゴはその日、俺の糞と共に下水へと流された。
◇
次の日、俺が鼻糞をほじくりながら、戦国ランスなどに興じていると、 ぺしんぺしんと玄関を叩く湿った音がする。
何事かと玄関を開けてみると、1日便槽に浸かりながら、必死に脱出を試みたタンゴが、 体中に茶色の染みを染み込ませながら、下唇を噛み、必死にデェックッ!!デェックッ!!と 涙を堪えながら、その場に立っていた。
「デェックッ!! デェックッ!!」
(バタンッ!!)
見てはならぬ物を見てしまったと思わず玄関を閉める俺。
「デェックッ!! デェックッ!! admitしてデスゥ〜!! allowして欲しいデスゥ〜!!」
ひたすら玄関を、ぺしんぺしんと叩き続けるタンゴ。 このままでは近所迷惑なので、庭に蹴飛ばして、冷水ホースで洗うことにした。 この冷え込んだ秋の気持ちいい澄んだ空の下で相当気持ちいいのか、デギャァァァッ!! デギャァァァッ!!と叫びながら、ホースの水を避けるようにして駆け回っている。 あはは。面白いぞ。ホースの先を捻るようにして流水の強さを調整すると、一晩便槽に 浸っていたタンゴの実装服が、糊のようにはがれて行く。おお、腑ロの言う通りだ。
1時間後。庭に散乱した自らの溶けた実装服を、デーと青紫の唇で呟きながら、 手で一枚一枚かき集めるタンゴ。
「おい… 大丈夫か、タンゴ」
しかし、タンゴは歯を食い縛り、俺の目を見据えて言った。
「allowとpermitの違いデスッ!!」(クワッ!!)
おお、男だ。(注:女の子です)
「allowが「許可する」という意味の一般的な表現デスが、permitはそれよりは 少し堅苦しく改まった感じがする表現になるデスッ!!」
「ん〜、つまりpermitの方が厳密に許可されるイメージなのか」
「その通りデスッ!! permitは【特に正式な決定や規則、法律によって許可する場合】に使うデス」
続けて、タンゴは言う。
「全ての実装石は、「実装法」において皆飼い実装になることをpermitされているデスッ!!」
突込みどころ満載だが、秋空に冷水を頭から被りながらも、必死に震えながら力説する タンゴに免じて、何も突っ込まない事にする。
「そういや、admitもpermitもスペルが似ているよな」
「いいところに目をつけたデスッ!!」
タンゴがクルリとポーズを決めながら、俺に震える指を差す。(やった、決まったテチィ)
「admitもpermitも語源が同じデス」
「語源?」
「そうデス。英語の起源を知っているデスゥ?」
「ん〜。そんなもの考えたこともねぇなぁ」
「カバチタレデスッ!! 英語も今は全世界で標準的に使われているデスが、 元々は腐れ英国のちっぽけな島国に話されていた地方の方言にしか過ぎないデスッ!!」
「うわ〜 何か敵作ってるぞ、おまえ」
「歴史の中で、あの料理のまずい国が経済的に成り立ったこそ、現在の地位があるだけであって、 言語というレベルで語れば、そのルーツと言うものが必ずあるデス」
「ふむ」
「ラテン語って知ってるデスゥ?」
「ラテンって、あの中南米あたりに腰フリフリのラテンか?」
「アホデスゥ!! 間抜けデスゥ!!」
タンゴは人生の負け犬を見るような蔑む目で俺を見やり、口奥から かぁ〜ぺっと痰を俺の顔に吐きかけて続ける。
「ラテンとは、南欧州の一部で、そこで11世紀辺りに話された言葉を「ラテン語」と言うデス」
が〜ん、そうだったのか。
「フランス語もイタリア語もスペイン語も、結局その当時の言語の方言に過ぎないデス。 だから単語の構造には、必ず語源が存在するデス。それを理解することが、 英単語攻略の必須条件なんデギャァァッ!!」
そう言って、タンゴは自らの破けた実装服をこねて、庭先に文字を描き始めた。
「admitは、ad(〜に向けて)とmit(送る)で、admit。 permitは、per(〜を通して)とmit(送る)で、permitデス」
「おい。それで、何でadmitは「入ることを許可する」って意味になるんだ」
「想像力を膨らませるデス。ラテン語が使われていた時代は、町と町が随分と離れていたデス」
そう言って、タンゴは靴の左右を並べて言う。
「当時、町の間の移動なんて、そう簡単に出来たものではないデス」
そして、庭にある石ころを掴む。
「そうか。だから、こっちの町から町に「向けて」、人を「送る」場合…」
「そうデス。町の市長などが「入ることを許可」しないと、町には入れないわけデス」
そう言って、タンゴは石ころを片方の靴の中に入れた。
「permitはどうなる?」
「perはadよりも自由度が高いイメージデス。町の中に向けて入っただけでなく…」
そう言って、タンゴは靴を持ち上げ、その靴を振り、中に入った石をコロコロと転がす。
「町の中を自由に行動して、そして出て行き「通り抜ける」デス」
そう言って、靴の逆さにして、靴の中の石を地面にへと放り出した。
「より自由度の高い許可を貰っているイメージデス」
ふむ。なるほど。今までただ機械的に覚えていた単語も語源があることを理解すると、 何かとイメージし易い事がわかる。タンゴが何度も単語を覚えるのはイメージだ、 例文と合わせて記憶に焼き付けろ、というのも、なるほど合点が行くものだ。
「まだまだあるデス」
そう言って、タンゴは靴を履き、その石を踏みつけた。
「sub(下に)とmit(送る)で、【submit】。【服従する】という意味デス」
タンゴは、その足をグリグリと踏みつけながら、葉っぱ踏み踏みうっしっし よろしくデププと高らかに笑いながら、糞をブリブリとその石にひり出した。
「………おい、タンゴ」
「何デス?」
「おまえ、24時間近く便槽に居たんだよな」
「そうデス。それがどうしたデス」
「24時間、何も食ってないのに、何で糞が出るんだ?」
「………………」
「………おまえ、便槽の中で何食ってたんだ?」
「………何も食べてないデスゥ♪」
「なら、何で糞が出るんだよ」
「………ご主人様。admitには、もう一つ【認める】という意味があるデス」
「うん。それで?」
「ニュアンス的は、【〜が真実であることを渋々認める】、 【あまり認めたくはないが〜が事実であることに同意する】という意味での「認める」デス」
「うん。それで?」
「便槽の中で、ご主人様のウンコを食べたことadmitするデスゥ〜♪」
まったく酷い落ちだと我ながら思いながら、大団円を迎えた。
【本日、覚えた英単語】 admit allow permit submit
◇受験日まで、あと176日