『冬の実装石』3
■登場人物
 男  :天涯孤独の男。古い屋敷の持ち主。実装石に興味はない。
 親実装:必死に男に媚び居る成体実装石。
 仔実装:男に一宿の施しを受ける。合計4匹。
■前回までのあらすじ
 冬。雪が降り積もる寒冷地帯。その自然に必死に抗う実装親子が居た。
 限界とも思える生活の中、ダンボールの中で暖を取る親子。ある晩、
 男はダンボールの中の仔実装を気まぐれで家へ招き入れ、体と服を洗い
 食事と暖かい寝床を提供する。仔実装たちを親に返した後、その家族は
 男にまとわりつくように媚び始めた。只管、無視を続ける男と媚び続ける
 実装親子。無情にも時は流れ、すべてを白に染める雪が降り注ぎ始めた。
 親実装は、自然の猛威に翻弄されながら、ひたすら男への媚を続ける。
 親実装は下着を男に渡し、全てを男に許すことを決意する。
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男は下着を手にしたまま、実装親子を無視し、家に入ってしまった。
下着を失った親実装は、顔面蒼白となり、デスデスゥー!と玄関を叩きながら
男をひたすら呼んだ。
しかし、玄関の扉は開くことはなかった。
風が舞い、親実装のスカートがひらひらと揺れていた。
デスンデスンと泣く親実装を、仔実装たちはテチチチチ…と震えながら見上げていた。
親実装は震える仔実装を抱き上げ、白い白い息を吹きかけてあげた。
その暖かい息に、仔実装たちは目を瞑って、テチィィ〜と鳴いた。
親実装は潤む瞳で、愛する仔実装を眺めては、暗い暗い空を見上げた。
しんしんと降り続く雪。
その日は、世間では大晦日という日だった。
男は居間で暖かいコタツに足を入れながら、買い占めた煙草を吹かしていた。
時計は、そろそろ23時を回るところだった。
読みかけの文庫本をコタツの上に置き、買い込んだ食糧の中からカップ麺を取り出した。
俗に言う年越し蕎麦だ。
電子ポットから熱いお湯をカップに注ぐ。
熱々の熱湯がカップに注がれ、その湯気が男の顔を洗った。
男はコタツの中で、テレビを見ながら、湯気の立つ蕎麦を食べた。
そして風呂を沸かし、肌の焼けるような熱い風呂に浸かっては、額から汗を流した。
浴室の中に昇る湯気を見た。
男は、その白い湯気を見ては、何故か庭の親実装が吐いていた白い白い吐息を思い出していた。
外では、時間が経つにつれ、温度はさらに下がっていた。
風もさらに強くなり、雪も水分を含んだより重い物に変わっていた。
その雪は、実装親子の緑の服を白く白く染めていった。
親実装は、手の中の仔実装たちに元気がないことが気がかりだった。
揺すっても反応のない仔も中には居た。
親実装は暖かい吐息を吐きかけては、デスゥ!!デスゥ!!と必死に問いかけた。
親実装は、ない脳みそを働かせ、必死に仔実装が生き延びる術を思案した。
 …ッ! デスデスッ!!
何か閃いた親実装は、凍える仔実装たちを雪の上に置き、庭の足跡のない新雪の上に
ダイブしたかと思うと、ガチガチと震えながら、両手で必死に新雪を掘り起こしていた。
あまりの冷たさに、デッ!!デッ!!と小さな悲鳴のような物を繰り返していた。
親実装は、息を荒げ、必死に雪を掻き続けた。
その額には、光る汗も輝いて見えた。
親実装の紫色に変色した腕が、硬い地面に達したかと思うと、親実装はそこから
何かを必死に集めていた。
仔実装たちは、玄関先の雪の上で、抱き合いながら必死に震えていた。
4匹の仔実装の下着は、下痢で緑色に汚れていた。
それは下痢状のパンコン状態だったが、氷点下での下痢はシャーベットのように
硬く凍っていた。
その仔実装たちの下に、顔を蒸気で紅潮させ、汗びっしょりの親実装が
デスゥ〜♪と、意気揚々とやってきた。
親実装の両手には、抱えきれないほどの湿った枯葉が満載だった。
その枯葉を仔実装たちの横に置き、仔実装たちにその周りに集まるように指示をした。
手には枝を持ち、親実装は、デスゥ♪と言って、その枯葉の山を枝でつつき始めた。
歓喜の表情で、その枯葉をつつき続ける汗びっしょりの親実装。
時節、ブルルッと震えながらも、デスゥデスゥと意気揚々に枝で枯葉を突付く。
仔実装たちは、ガチガチと歯を鳴らしながら、両手を必死に枯葉の方に向けている。
 デスゥ♪ デスゥ♪ …デス?
突付いても、突付いても、暖かくならない枯葉。
チロチロ燃える赤い火を期待し、デスゥ?デスゥ?と繰り返し突付く親実装。
?な顔で、枝をしばし見ては、それは反対に持ち返し、再び枯葉を突付き始める。
 デス? デスゥ!? デスゥ!!
親実装のびっしょりと掻いた汗が、体温をさらに奪っていく。
そんな親実装を他所に、仔実装が元気なく、チーと鳴いた。
別の仔実装は、手を枯葉にかざしたままの格好で、無表情に横に倒れた。
必死に枯葉を突付き続ける親実装。
その表情には焦りの表情も見て取れ、鳴き声は次第に嗚咽も混じった物になった。
 デズゥ… デズゥゥゥ?
それは、数日前、男が庭先でした焚き火を思い出しての行動だった。
突付いているのに暖かくならない。赤いチロチロとした奴が出てこない。
親実装は、悲しみよりも怒りを感じていた。
 デスァ!! デシャァァァァ!!!
手の持った枝を折り、雪の中に投げ捨て、足元の枯葉を両手で左右に払いのけて癇癪を起こした。
 デシャァァァ!! デズデスアッ!! 
足元の枯葉を足で踏みつけ、子供が地団駄を踏むような行為を繰り返した。
そして、肩を上下させながら、息を切らした。
 デェー、デェー、デェ…
そして肩をこの上なく落ち込ませて、紫のかじかんだ両手を顔に当てて泣いた。
 デッスン… デッスン…
親実装は、しばらくすすり泣いていたが、周囲の静かな仔実装の気配を不思議に思った。
 デッスン… デ…?
親実装の足元の仔実装の1匹は、既に白い息をしていなかった。
先程、無表情で固まったように不自然に倒れた仔実装だった。
 デス?
その仔実装の目は白く濁り、目の表面にも雪の粒が溶けずに薄っすらと積もっていた。
 デス? デスエ?
親実装は、両手で仔実装の肩を揺らしてみた。
揺らしたが、仔実装は瞬き一つせず、白い息も吐かず、ひたすら沈黙を続けていた。
親実装は、その仔実装に異変が起こっていることに気がついた。
 デデッ! デスアッ! デェエエエ!!
両手でその仔実装の肩を揺らす親実装。
しかし、仔実装は両手を枯葉にかざす姿勢で固まったまま、動こうともしない。
 デギャァ!! デギャァース!! デスゥエーー!!
揺らし続けると、仔実装の首がもげた。
 デ?(ぴしゅぅぅぅぅぅ)
仔実装のない首の根元から、勢いよく噴出された血糊を顔面に浴び、呆然とする親実装。
 デ… デスゥ?
 デス… デスデ?
 デ、デ、デデデデ、デギャァァァァァ!!!
親実装は、転げる首を急いで両手で掴んでは、元の位置に添えた。
添えた首は、衰えない血の勢いでさらに弾かれ、親実装の鼻頭にぶつかった。
親実装は鼻血を流しながら、白くなった仔実装の生首を抱いては、大声で泣いた。
 デェエエエン!! デェエエエン!!
その親の叫び声に、他の仔実装の反応は希薄だった。
残りの仔実装たちも、今まで見開いていた目がトロンとしている。
 デデッ!
親実装は、鼻血を流しながら、生首を片手に、必死に他の仔たちの頬を叩いた。
 デズァ!! デズァ!!
眠ろうとする仔を必死に起こそうと頑張った。
 デズゥ!! デズゥ!!
しかし、仔実装たちは起きようとはしなかった。

風呂から上がった男は、日本酒を傾けながら、テレビを見ていた。
テレビでは、全国のお寺で鳴る除夜の鐘の生中継をしていた。
この街にも寺があり、冷たい夜の空は除夜の鐘の音を、遠くまで運んでくれた。
(ゴォ〜〜〜〜ン)
除夜の鐘が、透き通る暗闇の空間に鳴り響いた。
その鐘の音は、日本酒を傾ける男の耳にも届いていた。
その鐘の音は、必死に仔の体を擦って、泣き叫ぶ親実装の耳にも届いていた。
 デッ!
親実装は、その不思議な音色に驚き、顔を空に向けた。
(ゴォ〜〜〜〜ン)
 デッ? デデッ!?
除夜の鐘が鳴り響くたびに、親実装はデスァ?デスァ?と、空に顔を向けて、何処からか
聞こえるその鐘の音に、ただ怯え震えていた。
そして鐘の音が止むと、我に戻ったかのように、再び手の中の冷たい仔実装に視線を戻し
デスゥ!!デスゥ!!と揺らしては叫んでいた。
(ゴォ〜〜〜〜ン)
 デッ? デデッ!?
再び聞こえる鐘の音に、ビクッ!!と肩をすくめる親実装。
ブリブリと糞を漏らし、何処からともなく聞こえる鐘の音にデギャァァァァ!! デギャァァァァ!!と
威嚇を繰り返していた。
(ゴォ〜〜〜〜ン)
 デギャァ!! デギャァ!!
鐘の音に怯え、涙を流しながらも、親実装は雪の上に横たわる仔実装を必死に揺らしていた。
仔実装を必死に揺らす親実装の体中の汗も凍りついていた。
叫ぶ親実装の目から流れる涙も、たちまち凍てついていた。
(ゴォ〜〜〜〜ン)
鳴り響く、除夜の鐘。
目の焦点の合わない仔実装たちの口元からは、白い息は出なくなっていた。
冷たくなった3匹の仔実装を抱いては、親実装は、天に向って鳴いた。
 オロロ〜〜〜ン!!(ゴォ〜〜〜〜ン)
除夜の鐘と共に、喉を天に垂直に立て、白い吐息を流しながら、凍りついた仔実装たちを
胸に抱きしめ、親実装は哭いた。天の赤い月に向って。
男は居間で、除夜の鐘と共に聞こえる不思議な叫び声を聞きながら、無表情に日本酒を傾けていた。
除夜の鐘と交互に聞こえたその叫び声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
除夜の鐘が鳴り終わった頃、玄関前の白い雪の1部だけが、歪に盛り上がっていた。
その大きさは、丁度、成体実装石ぐらいの大きさだった。

親実装は夢を見ていた。
可愛い仔実装たちが、春の暖かい野原を走っていた。
親実装は、暖かい目でそれを見つめていた。
蝶を追いかけて、転ぶ仔実装。
花を摘んでは、自らの頭に花を飾る仔実装。
じゃれあいながら、野原を転げ回る仔実装。
親実装の隣には、背の高い人間がいた。
親実装は、その男は「ご主人様」と呼び、その男の暖かい手に自らの透き通るような肌の手を添え
デスゥ♪デスゥ♪と腕に頬擦りをしていた。
その人間の顔は、紛れもなく、この家の主である男の顔だった。
親実装は、明るい光で、その夢から目覚めた。
 ……デスゥ?
暗い雪の底で眠っていたはずの親実装は、不思議な趣で、目の前に光る物を見つめていた。
それは、石油ストーブの灯りだった。
手足の感覚がほとんどなかった。
しかし、この空間に広がる暖気が、その感覚を徐々に取り戻させて行っている事は実感できた。
ここは男の家の台所だった。
男がトイレに立った途中、玄関の靴箱の上の緑の下着に目が止まった。
そして、先程まで、鳴いていた声が聞こえなくなった事を思い出した。
この寒空、せめて下着だけは返そうと思い、玄関を開けた矢先に、男は玄関前で
雪に埋もれている実装親子を見つけたのだ。
助けたのは気まぐれだった。
雪解けした時に、死体を見るのが嫌だったのかもしれない。
大した理由はなかったが、男は結果的に実装親子を雪の中から掻き分け、
台所の床に敷いた新聞紙の上に、実装親子を置いた。
そしてストーブをつけて、その様をしばらく眺めていた。
そして、今目の前で親実装が目を覚ましたのだ。
目を覚ました親実装は、何気なく首を横に傾けた。
そこには、同じように仰向けになっている仔実装が、新聞紙の上に横たわっているのが目に入った。
全部で4匹。そのうち、仔実装の1匹の首から先はなかった。
 デスゥ!! デスゥ!!
親実装は、痛む体を他所に起き上がり、仔実装たちに覆いかぶさるように近づき、
デスゥデスゥと、自らの頬と仔実装たちの頬をすり合わせた。
しかし、その頬に伝わる温度は、氷のように冷たかった。
仔実装たちは死んでいた。
凍死であった。
 デ…
親実装は、ぺしんぺしんと仔実装の亡骸をたたき続けた。
親実装は、ゆさゆさと仔実装の亡骸を揺らし続けた。
1匹の仔実装を抱き上げは、両足を地面につかせて立たせようともした。
 デ…
考えられる試みを尽くした後、ようやく思い知った。
愛しい仔実装たちが死んだことを。
憔悴しきっている親実装は、デーと小さく泣きながら、潤む瞳で仔実装を見つめていた。
そして、親実装はデェエエエン!! デェエエエン!!と涙を流して、泣きじゃくった。
親実装は、しばらく泣き続けた。
涙が枯れた頃、親実装の体はすっかりと部屋の暖気を吸収し、手の感覚なども戻り始めた。
目元を真っ黒にしながら、親実装は始めて自らが置かれた状況に気がついた。
ふと顔をあげた先に、椅子の背もたれを前にして座っている男の冷たい目と視線が合った。
いつもなら媚びて回る親実装だったが、男の視線を自ら反らすと、その視線を再び
新聞紙の上で横たわっている仔実装たちに向けた。
男が台所から出ても、親実装は視線一つ動かさず、ただ仔実装の亡骸をデーと鳴きながら
見つめているだけであった。
翌日。
男は目覚めると、台所で佇む親実装の姿が目に入った。
昨日から一睡もせず、仔実装の亡骸を見つめていたようだった。
元旦から小動物の死骸を台所に置くわけにもいかず、男は思案の挙句、その新聞紙を
抱いては、玄関から庭に出た。
親実装も、デーと男のあとをぴょこぴょこと着いて行った。
男はスコップを取り出しては、庭の桜の樹の下の雪を掘って行った。
スコップが土の地面に当たっても、そのまま土も掘って行き、地面に手ごろな大きさの穴を作った。
男は仔実装の死体を1体ずつ掴んでは、その穴に放り投げた。
親実装は、涙が溜まる目で、男の所作を見続けていた。
最後の首のない仔実装を投げ込むと、男は土を被せて、その上にまた雪を被せた。
墓標代わりにスコップをそこにザクッと差すと、男はポケットから煙草を取り出し火をつけた。
空を見上げると、どんよりとした雲が流れていた。
まだ細かい粉雪が、男の髪の毛に降り注いでいた。
男は、しばし煙草を吸い、雪の上に煙草を捨てては足で掻き消すと、家の中に戻っていった。
玄関から家に戻る前に、庭の方をちらりと見た。
スコップの墓標の前では、親実装がうな垂れるように、座り込んで地面を見続けていた。
昼過ぎ。
男が昼食を終え、庭を再び見た。
親実装は、まだその雪の上に佇み、足元の雪を見続けていた。
折角乾いた緑の服は、また白い雪を積もらせていた。
男は特に声もかけることもなく、玄関を閉めた。
居間に戻り、正月のつまらない番組を回しながら、男は昼から日本酒を傾けた。
数時間後、小用を足した後に、ふと玄関先から庭を覗くと、親実装は居なくなっていた。
男は無表情で玄関を閉めて、居間に戻ってはつまらなさそうに日本酒に口をつけた。
夕方、晩飯のおせち料理と雑煮を用意している時、玄関先で、デスーという声が聞こえた。
男は急ぎ玄関に向かい、扉を開けた。
頭に白い雪を載せた親実装が、男の顔を見上げていた。
親実装は、手にコンビニ袋を携えていた。
そのコンビニ袋には、生ゴミが満載だった。
親実装は、皸の頬をさらに赤くし、その生ゴミの一つを掴んでは、デスーと言って
男に向って差し出した。
男はそれを受け取ると、何となく親実装の頭巾の白い雪を手で払ってあげた。
親実装は何とも言えない顔をして、男の顔を見続けていた。
親実装は、ひょいと玄関から家の中に入った。
男は不思議とそれを咎める気が起こらなかった。
親実装は、台所の隅に座った。
そこは仔実装の死体を一晩置いてあった新聞紙の上だった。
親実装は、コンビニ袋から、卵の殻などを取り出すと、カシャクシャ…とそれを頬張り始めた。
男は手にした生ゴミを三角コーナーに捨て、手を洗った。
男はテーブルの上の鯛の塩焼きやおせち料理を居間に運び、雑煮を椀に盛った。
親実装は、雪のついたティーパックを咥えて、その汁を啜っていた。
親実装は、男が給餌するご馳走の匂いに気付き、涎を流してそれを見ていた。
そのご馳走と手の中の生ゴミを見比べて、小さくデーと鳴いた。
男は居間に戻る際に、台所の親実装に見つめられているのに気がついた。
男は、無表情で、おせち料理からカマボコを一切れ、親実装の足元に投げた。
親実装は、嬉しそうにそれを食べた。

それから三が日。
親実装は、決まった時間に外に出かけ、どこからともなく生ゴミを集めては
男に一番いいところを差し出すようになった。
男は親実装が何をしたいのかわからなかった。
貰った生ゴミは、悉く捨てたが、ただ暇な正月に相手をしてくれる何かがいることに
男は奇妙な充実感を覚えていた。
親実装は、この家にいる間、奇妙な行動ばかりを取った。
男が居間でコタツで横になる。
すると、台所からもそもそと親実装がやってくる。
 デ〜♪ ボエ〜♪ ボエ〜♪
親実装は、手を男の頭に載せ、変な声で鳴いている。
男は薄目で親実装の表情を伺いながら、奇妙な行動を取る親実装を困惑の目で見ていた。
しかし実質、害がないので、親実装のしたいようにさせていた。
そんな奇妙な正月生活が過ぎていった。
そして、その時がやってきた。
1月4日未明。この地域に観測史上最大の寒気団がなだれ込んだ。
猛吹雪が吹き荒れ、雪は道を塞ぎ、家を孤立さえ、電線をなぎ倒し、人々を雪の中に孤立させた。
男の家も例外ではなかった。
(プツン…)
 デ?
暗闇に包まれる家。親実装は、大声で暗闇の中で叫んだ。
コタツで横になっていた男は、非常用の懐中電灯を探しては、玄関のブレーカーを調べた。
ブレーカーは落ちてはいなかった。
この停電は、供給元から電力が断たれていることに男は気がついた。
暗闇の中、足元で親実装が不安そうに、デーと鳴いていた。
この雪はその後、猛威を衰えさせることはなく降り続き、
この地区はこの豪雪により1週間孤立させられることになる。
しんしんと雪が降り積もる。
男の家には、食料や灯油は、残り3日分しか残っていなかった。
(続く)