サクラの実装石
『サクラの実装石』4
■登場人物 男 :仔実装のサクラを拾い育てる。サクラ親子の飼い主。 サクラ:男に拾われた実装石。厳しく躾けられ、一人前の飼い実装となる。 スモモ:サクラの長女。 イチゴ:サクラの次女。 メロン:サクラの三女。サクラの折檻で死亡。 バナナ:サクラの四女。 ==========================================================================
季節外れのサクラの枝を渡されたサクラは、翌日妊娠をした。 両目が緑色になった彼女は、今までの分を取り戻すかのように何倍も食べ始めた。 実装石に限らず、子を宿した母体は、本能的に必要以上の栄養を確保しようとするものだ。 サクラも例外ではなかった。 今まで痩せていた頬に肉がつき、カサついていた肌は、つやが戻って来た。 子を宿したサクラは、まるで生気が戻ったように、生き生きと輝き始めた。
サクラは両目の緑色で、デエ〜♪デエ〜♪とお腹を擦りながら胎教のために子守唄を歌っている。 『元気に生まれてくるデスよ』 そう呟きながら、お腹を擦るサクラ。 「「「テチー」」」 サクラの周りで子供達は、母親が元気なった事に対して喜び、はしゃぎ回っている。
あのサクラの樹のおかげで、サクラ達家族に平穏な一時が戻った。 あの不思議な出来事には、男は驚かされているばかりだ。 遅咲きで咲いた一枝のサクラ。 まるで、メロンの命がサクラの樹に宿り、咲かせたようなちっぽけな一枝。 それを待っていたように、何日も待ち続けたサクラ。 実装石は、まったく不思議な生き物である。それが男の素直な感想である。 しかし、今はその奇跡というべき一事に感謝しよう。 今ここにある幸せが、現実なのだから。 サクラはきっと丈夫な子をまた産むだろう。 そして、次は自分が名前をつけると言い張るに違いない。
そんな家族の中に少しばかりの異変が起きていた。 『玩具ッ! 遊ぶのッ! 玩具ッ! 遊ぶのッ!』 そう。仔実装達の粗相が目立つようになってきた。 その理由は男にもわかっていた。 サクラの躾が止まったからだ。
我侭を言う子供達に対して、サクラは口うるさく「デスデス!」と注意をするのだが 子供達が言うことを聞かない。 サクラは堪りかねず手を上げるが、その手がどうしても動かない。 サクラは、子供達をぶつ事ができなくなったのだ。
理由は当然だ。 メロンを死なせた自分が、他の子供達を躾けることができるのだろうか。 「テチーテチー!」と泣き叫ぶ姿が、サクラにとってメロンと重なっている。 打てない。 当然だ。 そういった躊躇が、仔実装達の本能を芽生えさせてきた。 「糞蟲」と言われる本能を。
「サクラ。俺が躾をしようか」 「デス・・」 サクラは躾に関することを男に委ねた。子供達の叫び声を面と向かって聞ける精神状況ではなかったからだ。 男は玩具遊びを要求している3匹の前に、実装リンガルを持ち座った。 久しぶりだが、躾のポイントはサクラで散々学んでいるつもりだ。 躾はタイミングが勝負である。
「おまえたち。あまりサクラを困らせるんじゃない。 玩具の日は昨日終わっただろ。今日は我慢して、絵でも書いていなさい」 『玩具ッ! 遊ぶのッ! 玩具ッ! 遊ぶのッ!』 バナナが相変わらず、先頭に立ち訴えかけている。 賢いはずのスモモもイチゴに混ざって、テチーテチーと玩具の使用を訴えかけている。 既に子供達は中実装並の身長になっており、針やデコピンなどでの躾が有効に働くとは思わなかった。 ならば、あれだ。
「サクラ。あれを取ってくれ」 「デ?」 それは、サクラにとっても恐怖の対象。 今までサクラが教育ママを演じていた時にも使用しなかったあのアイテム。 自分が感じた最強の恐怖を、子供達には味わせたくないとの気持ちで使用できなかったあの忌まわしいアイテムだ。
サクラは震える手で箪笥の中から、それを3つ取り出した。 凸型の千年灸。サクラのトラウマのアイテムだ。
男はサクラに施したようにテチーテチーと訴える仔実装達の頭巾を一人一人後ろに外す。 ?な顔をしている仔実装たちの頭の上に、シールで一つずつ貼っていった。
「!…テプッ! テプププッ!!」 「テプププァ!!」 「テプ…テププ♪」
仔実装達は、いきなり笑い始める。 頭巾を取ったその頭に凸型のお灸を貼られた奇妙な格好を互いに見て笑い始めたのだ。
「テキャァァ!! テププーーー!!!」 「テチュテチューーーー♪」 「テチィ? テププーッ!!テプププーーーッ!!!」
腹がよじれるぐらいに笑い転げる仔実装達。 その姿を憐れと思い、ハラハラとした表情で見つめるサクラ。 男は両手両足をバタつかせながら、笑い転げる仔実装達の頭のお灸に、一つ一つ火をつけていく。
その百草(もぐさ)から煙が上がっていく。 その煙が一層、仔実装達の笑いの壷に入ったらしい。
「プギャーーーーーーーッッ!!!」 指を指して、大声でさらに笑い転げるバナナ。 「テプププーーーッ!!! テプププーーーッ!!!」 腹を押さえながら、カーペットをどんどんと叩きつけるイチゴ。 「テチュテチュ テチューーーーン♪」 うつ伏せになり、両手両足をバタつかせるスモモ。
そして、百草(もぐさ)が1/3ほど燃え尽きた時、熱さが仔実装達を襲い始めた。 最初に異変に気付いたのはスモモだった。 「テァ!! ヂュアア!ヂュアアアアア!」 頭が熱い。何故?そう思い両手で頭を掻き毟る。 「デヂュアアアアアア!!!!」
イチゴとバナナには、涙を流しながら叫ぶスモモの姿が滑稽に映ったのか より一層、笑い転げ始める。 「プギャッ! プギャッ! プギャーーーーーーーッッ!!!」 「テプププーーーッ!!! テプププーーーッ!!!」
しかし、その2匹の笑いが苦痛の叫びに変わるのに、そう時間はかからなかった。
「テチァ!! デチャアアア!!!」 「ヂュアア!」
スモモと同様に、熱さが2匹の頭を襲う。
涙を流し、歯を喰い張りながら悲鳴をあげるスモモ。 糞を漏らし、鼻から緑と赤の何かを出しながら、泣き叫ぶイチゴ。 叫びながら、頭から血が流れるくらい、頬を両手で掻き毟り、叫ぶバナナ。
それを涙ながらに見守るサクラ。 サクラはその苦しむ子供達の姿に我慢できず、駆け寄ろうとする。 しかし、それを男が制した。
『ママッ!離してくださいデスッ!子供達がぁ!子供達がぁ苦しんでいるデスゥ!』 「サクラ。我慢するんだ。子供達のためだ」 「デデデスゥゥゥゥゥ!!!」 サクラはその場で崩れ落ちるようにし、涙を流しながら、カーペットに両手を思いっきり叩きつける。 その目の前では、凸型のお灸を頭に載せた子供達が苦しんでいる。 「デデェェェェェ! デヂァ!」 カーペットを両手で掴むサクラ。その腕からは血がにじみ出ている。
そのサクラを後方に、男は躾を始める。 「お前達。サクラを困らせるんじゃない」 『ママァ! ママァ! デヂュアアアアアア!!!! 助けてテチィ! 助けてテチィ!』 『テチィィィィィィィィィィィ… ママァ!! ママァ!! 熱いテチィ!! 熱いテチィ!!』 『デチチー!! 助けて! お姉ちゃん!! ママァ!! ママァ!!』 3匹ともパンコン状態で泣き叫び、苦しみ、のたうち回っている。
男は躾の途中、違和感を感じた。 どうも、サクラの時と勝手が違うのだ。 仔実装達は今、生まれて味わった事のない苦痛に苛まれている。 しかし、苦痛の原因、つまり今の躾の原因となった自らの行動の過ちを 理解しているように見えないのだ。
「玩具の日は、明日。今日は大人しくしなさい」 『ママァ! ママァ! 頭が熱いテチィ! 痛いテチィ! 取って欲しいテチィ! 取って欲しいテチィ!』 『テチィィィィィィィィィィィ… ママァ!! ママァ!! チィィィ…』 『ウポッ!!ウポッ!! テチァァァァァ!! テチァァァァァ!!』
そう。男に対してまったく詫びてないのだ。媚びてもいないのだ。 躾を行う男が眼中にないかの如く、仔実装達は目的もなく苦しみ、 そして闇雲にサクラに対して助けを求めるだけである。
「・・・そうか」 男は「実装石の飼い方」のある項を思い出した。
第2章.実装石の躾 ▼躾における注意点 躾という行為は、生まれたての雛に対する「摺りこみ現象」と似ています。 実装石は躾を受けてルールを学ぶと同時に、躾を与える飼い主に対して 絶対的な服従関係を学んでいきます。 そのため躾を行うときは、必ず同一人物が行う事が大事です。 仮に途中で躾ける飼い主が変わると、実装石は服従関係もない飼い主に 対して、正当な躾行為であっても、理不尽な痛みを受けたと勘違いし より怨みを募らせる結果となります。 家族が多い家庭で実装石を飼う場合は、家族で交代交代で躾を行うように してください。そうすれば、実装石も、家族の中で自分が一番下であると 認識するようになり、家族の中での地位も自然と学ぶようになります。
この仔実装達に対しては、サクラが躾を行い続けてきた。 もう既に中実装の大きさまで成長した彼女らを、男が途中から躾けることは 非常に難しいのだ。
男は躾を断念し、スモモ達の頭から千年灸を外していった。 「デ?」 涙を流していたサクラも、何が起こったのか、?な顔で男の顔を見上げた。
地獄の熱さから開放されたスモモ達は、テェエ テェェと荒い息を吐きながらも なんとか平静を取り戻しつつある。 『だ、大丈夫デスか!お前達っ!』 駆け寄るサクラ。
『ママァ 熱かったテチ〜』 『テッスン…テッスン… ママァ 抱っこしてテチ〜』 『お〜よしよし。熱かったデス。これに懲りて、もう玩具を要求しては駄目デス』 サクラは一人一人の頭を擦りながら、優しく、そして、今回の躾の原因について諭して行った。 しかし、その時、スモモが男を指さして叫ぶ。 『悪いのはコイツテチッ!!』
「デデ!」 予想にもしなかったスモモの台詞に、サクラは思わずデデ!と驚き戸惑ってしまう。 『その通りテチ! コイツがワタチ達に変なのを貼ったテチ!』 「デデデ!」 『ニンゲンッ! アッチに行けテチ!』 バナナは下着に溜まっている糞を掴んでは、なんと男の顔にぶつけた。
その糞が男の顔にぶつかる。 男が指で糞を拭うが、その糞が拭った方向に跡形がつく。 その跡形のついた男の顔が、仔実装達に滑稽に映ったらしい。
「!…テプッ! テプププッ!!」 「テプププァ!!」 「テプ…テププ♪」
先ほどの熱さと痛みなど、もう忘れたのか、男の糞のついた顔を見てテププと笑う仔実装達。
『デェ!お前達、なんて事をするデス!』 『ママは黙っているテチ! このニンゲンを、ワタチ達の家から追い出してやるテチ!』 イチゴは、アンモニア臭のする尿がたっぷりと混ざった糞を 下着の中から取り出しては、男の顔に向かって投げつける。 『そうテチ! いつも思っていたテチ! なんでオマエはワタチ達の家に勝手に住んでいるんテチか! 居候ならその身をわきまえるテチ!』 先ほど糞を投げたバナナは、下着の中にもう糞がないことに気付いては、 もう1度新たに糞をひり直し、その新鮮な糞を男の顔に投げつける。
『ワタチ達は、おまえがいなくても立派に生きていけるテチ!』 『そうテチ。ママさえ居れば幸せテチ!!』 『ママの取ってくるご飯は毎日美味しいテチ』 『ママがくれる金平糖は最高テチ!』 『ママの毛布は暖かいテチ〜♪』 『お風呂のアワアワも最高テチ! ニンゲンの出る幕はないテチ〜♪』
「デデェェェェェ!」 サクラは開いた口が塞がらない。この子達は、一体今まで何を見てきたのか。 今まで躾を行ってきたが、肝心の事を、まったく理解していないのだ。 一体、誰のおかげで、毎日お腹一杯満たされているのか。 一体、誰のおかげで、毎日暖かい毛布で眠ることができるのか。 一体、誰のおかげで、毎日このような幸せな生活が送れているのか。 すべては、私のママのおかげデス!ママが私を拾って育ててくれたから、 ママが私がママになることを許してくれたから、お前たちが存在しているのデス!
すべては、今まで仔実装の世話と躾をサクラが一手に引き受けたために起こった食い違いであった。 サクラは、毎日仔実装達の餌の準備をする。 仔実装にとってみれば、サクラが与えた餌を食しているわけである。 サクラは、毎日仔実装達にオヤツの金平糖を与える。 仔実装にとってみれば、サクラが与えた金平糖を食しているわけである。 サクラは、毎日仔実装達を暖かい水の出る噴水で、体を洗ってやってる。 仔実装にとってみれば、暖かい水が出るサクラの魔法。 サクラは、毎日仔実装達を雨風が凌げる暖かい部屋の中で、毛布で抱いて眠らせている。 仔実装にとってみれば、それはママの暖かい腕(かいな)の温もり。
仔実装達にとって、今の生活を支えてくれている対象は、サクラその物だったのだ。 男は、その飾りに過ぎない。 たまに玩具で遊んでくれるやさしい雑用人という位置づけに過ぎなかったのだ。
サクラは肝心な事を躾けられなかった自分に気付き、「デェェ…」と力無く嘆いた。 無論、サクラが気付くぐらいの事だ。男も同時に今の状況を理解した。 男はその場は引き下がるしかなかった。 男が居間から立ち去ると、仔実装達は勝ち誇った表情でテププテププと歓喜の声を上げた。 その横でサクラは、緑の両目に涙を浮かべながら、子供達の姿を見つめていた。
「デフー」 サクラは憔悴していた。 躾はタイミングが大事である。男に教えられた事だ。 今こそ、仔実装達に、男の有難さを教え込むべきなのだ。 サクラは悩んだ挙句、男にある計画を打ち明けた。 『ママ、お願いがあるデス』 その計画を聞いた男は、驚いた表情を浮かべ、サクラに問いかける。 「おい。サクラ。本気なのか」 『・・デス。躾はタイミングが大事デス。すぐに始める必要があるデス』 「・・・・サクラ、おまえ」 『・・デス』
その計画は、早速今夜行われた。 仔実装達が寝付いた深夜、暗闇の居間に男とサクラが立っている。 男の手には、移動用の実装ケージ。 サクラは、仔実装達を起こさないように、手際よく、仔実装達をゲージに入れる。 そして、男はサクラの手を引いて、玄関から家へ出る。
飼い実装石のサクラにとって、散歩は何度か経験している。 ママの家の周りの地理などは理解しているつもりだ。 この道を突き当たりの白い大きな家には、犬がいる。近づいてはいけない。 この先には、大きな川が流れている。向かいにはコンビニがあり、その隣には 大きな公園があるのだ。
サクラと男は、その暗闇の公園へとたどり着いた。 男の手の中にあるケージには、仔実装達が、まだ寝息を立てて眠っている。 男はサクラの計画を聞いてから、その夕刻、ある物を公園に準備していた。 公園の奥、樹の木陰に位置し、公園にやってくる通行人などの目からも逃れる事が できる場所に、それはあった。 ダンボールである。 男は、夕刻、先にダンボールの置き場所を探し、そこにそれを設置していたのだ。 それは、サクラ親子の新たな家。
サクラが提案した計画。 それは、男の庇護のない生活を、仔実装達に体験させる事である。 ダンボールハウスには、無論、お湯の出る噴水もなければ、暖かい毛布もない。 そういった生活を仔実装達に知らしめることにより、男の庇護の下の 今までの生活が如何に恵まれていたかを、身を持って知って貰うための、躾の一環であった。 その生活に、サクラは身重の体を進んで投じる事を、男に提案したのだ。
男がケージを置いて、ダンボールの扉を開けた。 「デッ!」 何と、中には抜け目なく、既に入り込んでいる先約がいた。 「すまないな。ここは俺が作った家なんだよ」 「デスデスデスデスゥー!!」 実装リンガルで立ち退きを迫るが、もちろん怒り狂う先約の実装石。
男はポケットから金平糖を取り出し、交渉を始める。 怒り狂っていた実装石は、ピタリと鳴き止み、男が取り出した金平糖をじっと見つめている。 「悪いな。ここは俺のダンボールなんだよ」 「デ〜…」
もう男の話を聞いていないみたいだ。 先約の実装石の思考は、目の前の金平糖にのみロックされている。 涎を滝のように流す実装石。 新しいダンボールに、その涎が水溜りのように溜まっていく。 それは堪らぬとばかり、男が金平糖を目の間に持って行き、その実装石を何とか 外へと釣りだした。
「すまんな。これで頼むよ」 「デス」 実装石は、金平糖を両手で掴み、その場でむしゃぶるようにして口に入れる。 その隙に、男はケージの扉を開けて、仔実装達を起こさないように、一人一人 ダンボールハウスへと入れていく。 そして、最後に入ったのがサクラだった。
「サクラ。これを渡しておく」 それは、実装フォン。実装石用に開発された小型PHSだ。 特定の飼い主とのホットラインで通信できる携帯電話である。 実装リンガル機能も備わっており、音声再生機能より、リアルタイムに 会話をすることが可能だ。大きさも実装石に合わせて作られており、 実装石の不器用な手でも簡単に操作できるように、ボタンも簡単な配置で 設計されている一品である。 「何かあったら、これで俺を呼ぶんだぞ。いいな」 「デス」 サクラは緑色の両目で、そう鳴いた。
身重のサクラの出産予定日は、まだ2週間程先である。 サクラの容態に変化があるようであれば、この計画は早く打ち切る必要がある。 男は仔実装達の教育よりも、サクラの体が心配だった。 しかし、サクラにとって大事なのは、自分の体よりも、仔実装達の教育だった。
『ママ、心配しないで欲しいデス。この子達は、きっとわかってくれるデス』 「ああ。おまえの子供だものな」 『そうデス。私の子供デス』 「何かあったら、電話するんだぞ」 『デス。さ、早く行ってくださいデス。子供達が目を覚ますデス』 「ああ。じゃぁな、サクラ。また連絡をするからな」 『デス。しばしの別れデス。デスデスデス』
男がダンボールハウスを後にすると、先ほどの実装石が既に金平糖を食べ終わっていた。 男の顔を見るなり、また「じぃ〜」と男のポケットのみを見つめる。 「すまんな、もう無いんだ」 男が両手をあげる仕草をすると、実装石はチラっと男の顔を一瞥すると、チッと 舌打ちをして、その場を去った。 男は公園を出る前に、サクラがいるダンボールハウスの方へ目をやった。
サクラ達の厳しい公園生活が始まったのだ。